壊れた獣の行く末は壱【文スト】 (ページ32)

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第三十話ページ32

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数日後、動きがあったと連絡が入り、インカムに構成員から人虎と泉鏡花の行動が逐一報告されてくる。
この様子だと、もうそろそろ軍警に向かうだろう。

今回の作戦の鍵は芥川先輩だ。

私は、ほとんど裏で指示を出すだけで、実行するのは芥川先輩。

彼への懸念事項は感情に走る場合がある事だ。

人虎はほんの少しの期間とはいえ、探偵社員。
そして、太宰治も現在は探偵社員だ。

何か言われていて、変な方向に突っ走らないとは限らない。

取り引き相手は「生きた(・・・)人虎」を所望している。
殺してしまっては元も子も無い。

芥川先輩も軍警の詰所に向かった。

私も動こう。

ビルを出て、正面に着けられていた黒塗りの車に乗り込む。
目的地を告げる必要すらなく、車は滑らかに発車した。

脳内で計画を見直す。

今のところ順調と云っていいだろう。

ﾌﾟﾙﾙ、ﾌﾟﾙﾙﾙﾙ

携帯が音を鳴らしたのに気が付き、耳をあてる。

『はい。朱殷(しゅあん)です』

＜芥川です。人虎捕獲完了。鏡花もいる＞

『了解です。人虎は予定通り船で運びます。そのまま港へ向かって下さい。くれぐれも殺さないように。
鏡花はマフィアへ帰って貰いますので、黒服をつけて港に居させて下さい。回収します』

＜承知した。運び屋はどうする？僕(やつがれ)が始末すればいいか？＞

『あぁ、彼らは私が処理(・・)します。取り引き期限まで時間があまりないですし。その運転手だけお願いします』

＜分かった＞

『では、頼みましたよ』

無機質な音を立てて通話が切れる。

それと同時に車が目的地に着く。
沢山の、同じような貨物自動車(トラック)が並ぶ場所。
密輸業(ミュール)あがりの運び屋、カルマ・トランジットの本拠地。

直接私が出向くのは久しぶりだから、くれぐれもヘマをしないようにしなければ。