第二十五話 ページ27
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「芥川です」とドアを隔てた先から聞こえた声に、入室を許可する。
入って来たのは2人。
1人は芥川先輩。
もう1人は、茶髪にゴーグル、緑のスカーフを後ろに流した白衣を着た男──梶井基次郎。
『2人とも、お疲れ様でした。報告を聞かせて下さい』
私は執務机で座ったまま、2人は立たせたままで報告を促す。
報告によれば、人虎は泉鏡花と、人虎と出掛けた探偵社の与謝野晶子は梶井と戦ったそうだ。
与謝野晶子の異能は想像以上に厄介。
彼女がいる限り、死にさえしなければ探偵社員はどんな怪我でもたちどころに治して前線に出てくる。
そんな異能について多少分かった事が増えただけでも、まぁ収穫だろう。
泉鏡花は人虎に敗れ、その後、爆弾の緊急停止
川の上で爆発した為、電車から飛び降りた、又は押されたと思われる。
その後、人虎も鏡花も電車内には確認出来ず。
こんなところだろう。
芥川先輩は命令していない行動を取った事を隠さなかった。
反省しているという事だろうか。
『報告、ご苦労さまでした。芥川君は次の事があるので残って下さい。梶井君は下がっていいですよ』
薄く浮かべた笑みを崩さず、命を下す。
梶井さんは頭を僅かに下げて退室し、芥川先輩は微動だにせず、立ったまま。
『大丈夫ですよ。泉鏡花は生きています。ついでに、居場所もわかっています』
「……は?」
おや、珍しい。
芥川先輩が仕事モードの私に、うっかり「は?」だなんて。
『冗談ではありませんよ?鏡花には、あらかじめ発信機をつけてあります。居場所は筒抜けです』
私は、完璧な計画を立てるには力不足だ。
だから、計画を立てても、それが失敗したとき用に予防線をいくつもはっている。次に向けて動けるように、常に正確な情報を集めている。
ましてや泉鏡花は姐さんから頼まれたのだ。対策はしてある。
今回のような事態になった場合は──
『鏡花に与えた任務を変更します。次は「
人虎は優しい。
優しすぎるが故に、私なんかにつけ込まれる。
鏡花は罪の意識に囚われていた。
ならば、必ず軍警へ向かうはず。
『鏡花に、人虎を連れ出して貰いましょう』
私は口角を上げたまま、最後に付け足す。
『
全部知っているよ、という意思表示。
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作者名:安蒜 佑 | 作成日時:2020年3月11日 22時