絵本のお姫様は◇サンジ ページ1
[お姫様は誰だって可愛かった。]
お姫様は可愛くて、優しくて、必ず好きな人と結婚できて。
俺にはできない事だ。
俺は優しくない。可愛くない。好きな人はいるが、その人と好きになれるわけが無い。
だって、そいつは男っぽいやつなんて苦手なはずだから。
だから頑張っておしゃれしようとしても、失敗に陥る。
スイーツだって作ろうとした。だけど相性が合わないようだ。
そんな散々な結果で終わった全ての｢女の子になれる方法｣。
ナミとロビンは真剣に教えてくれたんだろうけど、ダメだった。アイツらになんて答えようか。
そんなことを順々に思ってると、影が後ろからもう1つできる。
後ろを振り向くとそこには、俺の愛しき人……サンジの姿が。
｢な、なんだよ……｣
ほら、可愛くない。なんで好きな人の前ですら可愛くできないのか。
｢お前……最近、なんか女子力磨いてるみてェだな……｣
｢なんだよ。笑いにきたのか？ なら、悪いな。俺は今、いじけ中なんだ。今、俺のそばに近づいたらイライラする｣
すると全身に温もりが。
どうやらサンジに抱きしめられてるようだ。
なんで。なんで。ってテンパりすぎてたら。
｢おれは……どんなお前でも好きなのによ。なんで届かねェんだ。この思い｣
突然聞こえたその言葉に俺は耳はもちろん、顔まで自分でもわかるほど真っ赤になった。
なんで。どうして。
そんな疑問が頭の中にぐるぐると回る。
そんな混乱した頭で唯一言えたのは、否定の言葉だった。
｢そんなことない。だって……俺は……こんなに可愛くなくて……｣
｢可愛いさ｣
｢こんなに優しくなくて……｣
｢優しいさ｣
｢好きな人になんて……好きになってもらえなくて……｣
｢好きなんだ。おれは。お前のことが｣
｢そんなこと……｣
｢ある。おれは、お前が好きだ｣
そう言われて、なにか吹っ切れたような気がした。
今まで溜め込んでいたものを、パーンと解放したような、そんな気が。
｢そうか。ありがとう。俺も、お前が好きだ｣
やっと実った両思い。
これを大切にしていこう。
(ありがとな。サンジ。そしてよろしく)
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作者名：秋宮 鈴歌 | 作成日時：2017年3月24日 16時
