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「＿＿それでも、俺は出ていく。この状況を打破するんだ。人間たちに一泡吹かせて、同士たちを導く。だってこんなのおかしいだろ。……おかしいんだ、グリーン」
「……」
「逃げ切る自信がある。全員とは、言わないが。でも頼りになるやつらがいる。俺は絶対生き延びて、そいつらと革命を起こす」
全員が助かるとは言わない。犠牲になる存在のことも考えている。幸せ一つの綺麗事ではない、しかし＿＿レッドは間違いなく全てのイスカリオテのために動いている。
望津璃染邦は、目を逸らさずに口を開いた。
「……パープルは」
「来る」
「ピンクは」
「来ねえ。あいつはむしろ人間のそばにいたがってる」
これ、もらったの！ と嬉しそうに笑ってピンクのリボンを自慢してきた彼女の姿を思い出し、ああ、とため息のような返事をした。
「……グリーン」
「いいか、レッド。お前がこれからやることは最低最悪だ」
「ああ」
「俺はお前を軽蔑する」
「ああ」
「二度とその面見せるな」
そう言って背を向けて、本を開く。数秒の間を置いて、足音が遠ざかっていった。
こうして、望津璃染邦は大馬鹿野郎と縁を切ったのだ。
＊
監獄が、地獄に成り果てた。自由はなくなり、規制は強まり、人間たちによる蹂躙は限度を無くした。
レッド。お前のことはもう生きてたって死んでたってどうでもいいが、パープルは逃げ切ったか？ あの日、人間たちが麻袋に詰めて引きずり連れ帰ってきたいくらかの同士たちは、どいつもこいつも痣だらけで、パープルかどうかの見分けもつかなかった。
数日後、ピンクが泣き腫らした目で、掠れた声で、ボロボロの布と鼻につく匂いをまとい絶望していた。
もらったリボンをつけるために伸ばしていた髪がざんばらになって、そのリボンはもはやその手の中にすらなく。ピンクは、ずっと唸っていた。うぅう、う゛う。信じていた、大好きだった人間に、暴力を振るわれたのだと。押し倒され、胸を揉まれ、無理やり暴かれたのだと。あの優しい笑顔は嘘だったのだと！
うぅ゛、ぁああ゛、うう゛、ぅ゛、ぅ゛っ………………。朝も昼も夜も唸り続け、獣に成り果てた少女は、更に五日後、ついに首をくくった。
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