【サーヴァンプ】あなたへ送る花の歌 憂鬱組

スターチス｢永遠の誓い｣ ページ49

｢――――君が好きだよ、A｣


夢を見ているのかもしれない。
どこか熱に浮かされたような思考で、Aは思った


ずっとずっと慕っていた
気持ちを伝える事は、それこそ永遠に無いと思っていたのに。


目の前にある椿の顔が
伝わってくる息が
自分を射抜く紅い瞳が

Aに〈これは夢ではないのだ〉と教える


｢――――泣いてるの?｣

唇を離した椿が心配そうに顔を覗き込む
Aはすぐに首を横に振った


『大丈夫です……』

そう言って涙を指で拭う
……何故なら、これは嬉し涙だから


｢本当に?
実は勘違いで、迷惑とか……じゃなくて?｣

椿が珍しく自信なさげに問う


『……椿さん』

紅色の瞳が椿を映した
苦笑をこぼしたその顔に、もう涙はない


『迷惑なんて絶対に有り得ません。
……だって』

そう区切って、Aは俯く

間をおいてパッと顔を上げると、頬を赤く染め照れ笑いの表情を浮かべた



『――――私も……


ずっと、お慕いしていたんですから』

そう言って、今度はAからキスをした




｢――――いいね、コレ。あったかい｣

椿はAから貰った黒のマフラーと手袋をして上機嫌だ

和服にマフラー&手袋という異様な組み合わせだが、椿が嬉しそうなので良しとする


｢僕もAに何かあげたいな。何が良い?｣

『私は、前に頂きましたからｯ』

急にホテルを飛び出したせいで今はないが、椿から貰った手袋は大切にしまってある


｢それはそれ。うーん……どうしようかな｣

椿はぐるりと視線をさまよわせると、一軒の店を目に止めた


｢……あぁ。アレがいいね｣

椿は満足げに頷いて、｢少し待ってて｣と店に入る


――――そこは小さな花屋だった


｢……お待たせ。はい、コレ｣

微笑みながら椿が手渡したのは、赤いバラやスターチスなどをあしらったアレンジメント

『わぁｯ……すごく可愛いです、ありがとうございますっ』


Aが顔を赤らめて喜ぶと、椿は｢どう致しまして｣と笑う



｢……ねぇ、A。花言葉って良いよね｣

『……えｯ?』

突然すぎる椿の発言にAは首を傾げた


｢だって、言葉にしなくても分かる人にはちゃんと伝わるから｣

『伝わる…って。椿さん?あの』


赤いバラとスターチス
もしかして、とAは赤面する


｢君には、ちゃんと伝わるかな?｣

椿は悪戯っぽく笑う


『椿さ――――』

｢……愛してるよ、A｣

彼女が口を開くよりも先に



彼はキスで、永遠の愛の誓いを立てたのだった

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