【サーヴァンプ】あなたへ送る花の歌 憂鬱組

金魚草｢推測ではやはりＮＯです｣ ページ40

『はぁあぁ……』


今日一日で最大の溜息をつく

オトギリは金魚草を活けるAの隣で座りながら、ずっと悩み相談を受けていた


―――椿は、｢Aが桜哉に告白した｣と勘違いしてるらしい

少し考えて、日頃のAの態度を見ていれば分かりそうなものなのだが……


―――鈍感な男。

オトギリは溜息をつく


｢……本当に、困ります｣



『そうなんですよぉ〜』

Aが泣きそうな顔でオトギリに縋る


『私のタイミングが悪いばかりにｯ』


｢……そうじゃありません……｣

―――鈍感なのは、お互い様のようだ



｢……いっそ、本当の事を言ってはいかがです?｣

オトギリの言葉に、Aは首を傾げる

『本当の事……?』



｢――――"椿さんが好き"だと｣


Aの動きが止まる。

次の瞬間、凄まじい勢いで首を横に振った


『む、無理無理ｯ!無理ですｯ!!


畏れ多くて出来ませんｯ!!』


｢でも、勘違いされたままは嫌でしょう?｣

全くもって正論であった。
勘違いされるのが嫌なら、本当の事を言うのが一番だと、分かっている。


それでも一歩を踏み切れないから、今悩んでいるのだ。

グッと唇を噛むAに、オトギリは再び溜息をつく


｢そんなことだから、皆があなた方にやきもきする羽目になるんです……｣

『や、やきもきって』


まるで椿とAの気持ちが同じ、とでも言いたげだ。


『だって……』

Aは切なげに金魚草を黄色い花弁を見つめる


……もし本当に、思いを告げられたとして



―――答えは決まっている。


『そんな事、わざわざ言いたくありません……』


｢……A……｣




――――不意に、部屋のドアが開いた。



『……あ』


｢……ノックも無しに女性の部屋に入るなんて、困ります……


―――椿さん｣


｢!!……やぁ｣

椿は一瞬目を見開いてオトギリを見ていたが、何故かすぐに安堵の表情を浮かべた。


『つ、椿さんｯ……』

Aが慌てて立ち上がる。


『あ、あの、この間は――――』

「A」


突然、椿がAの腕を掴んだ。

『……えっ?』

｢来て｣


そう言うなり、椿はAの腕を引いて部屋を出る

『つ、椿さんｯ……ちょっと……えぇｯ!?』


慌てて振り返ってオトギリに助けを求めたが、彼女は微笑みながら手を振っていた。

『お、オトギリさん〜〜ｯ』


｢……頑張って下さい、A｣



(『薄情もの……』)
(｢何か言った?｣)
(『い、いえ、何もｯ』)

(――――何が起きてるのｯ!?)

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