椿 「完全な愛」 ページ2
…………コンッ。
『椿さん』
小柄な少女が、後ろに現れた青年の姿を確認するまでもなく、名前を呼んだ。
"椿"と呼ばれた青年は、柔らかに微笑むと少女の後ろ髪をひと束手にとって顔を近付ける。
―――――少女の手には、椿の花が握られていた。
「また、花を生けてたんだ……A」
『はい。綺麗な椿が手に入ったので、折角だからここに飾ろうと思って』
Aと呼ばれた少女は、花の枝を鋏でパチンと切ると、綺麗な瑠璃色をした花瓶へと挿した
真っ青な花瓶のせいか、椿の紅が一層に引き立つ。
椿の花を飾っているこの部屋は、Aと同じ下位吸血鬼の桜哉達がよく談笑したり麻雀をしたりする、いわゆる談話室のような部屋だ。
そこに花があるだけで、周りがずっと華やかになる。
Aはそんな力を持った"花"が好きだった
「…………綺麗だね」
目の前の花と同じ名を持つ青年は、嬉しそうに目を細めた。
『そう言ってもらえると、飾ったかいがあります』
Aもフフっと嬉しそうに微笑んだ。
椿はAの紅色の瞳を見つめると、ちらりと花が挿さった花瓶を見た。
「………良い色だね。僕は好きだな、この色」
『はい、私も好きですよ。
―――――椿の紅色。椿さんの瞳みたい』
Aは嬉しそうに椿の花を指で撫でた
当の本人は、予想に反した反応に目を丸くする。
「いや、そっちじゃなくて……
―――――……まぁ、いっか」
そう苦笑を漏らすと、突然ニヤリと妖しげに笑う。
そしてこう言った。
「――――僕の瞳と同じだから、好きなの?」
『…………へ』
Aは今更失言に気がつき、あわあわと慌てふためく
『あ、あの、なんというか、そのッ……!!た、確かに好きなんですけど、これはあのっ……』
「―――――ぶっ……!!」
『…………えっ』
「あはっ、あははっ!!あーっはっはっハッハッハッアハハッ!!」
――――また始まっちゃった……
Aは内心頭を抱えた。椿は突発的に笑い出す癖がある。始まるとなかなか終わらない上にこれだけ笑っても最後は「面白くない」と吐き捨てる。椿の下位吸血鬼であるAですら、理解できない。
―――――筈だった。
「…………Aは面白いね」
『……えっ……?』
椿はそう言うと、Aの頭を撫でて部屋を出てしまった。
――――部屋には、椿の花と同じ様に顔を紅くさせたAだけが残された
(……そんな不意打ち、卑怯です)
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柊 - 全部甘々ぁぁぁぁぁぁ┗(^o^)┓三←逃げる主さん (2016年12月19日 20時) (レス) id: d11167310b (このIDを非表示/違反報告)
暁 瑠卯@ツイ民(プロフ) - まじもさん» ふがが〜!?!?丁寧なコメントありがとうございます!!!!個人的にもこの話は好きな話なので、そう言って頂けると本当に嬉しいです……(*^^*) (2016年8月8日 9時) (レス) id: d9a84170e9 (このIDを非表示/違反報告)
まじも(プロフ) - あと書ききれなかったのですがこれからも小説書いてくださると嬉しいです!よろしくおねがいします! (2016年8月8日 6時) (レス) id: 2a2ae8b192 (このIDを非表示/違反報告)
まじも(プロフ) - 小説読ませていただきました!ありがとうございます!!ほんとにほんとによかったです!うまく言えないんですが椿さんと他のみんなもかわいい一面があってよかったのとすれ違いとか自分がキズついだりした時感情移入?しちゃって泣いちゃったりしたしたw (2016年8月8日 6時) (レス) id: 2a2ae8b192 (このIDを非表示/違反報告)
暁 瑠卯@ツイ民(プロフ) - いなさん» 鉄夢の方も見てくださったんですね!!ありがとうございます(*^^*)仰る通りで、こちらと鉄夢の方は同じ世界観で作ってます(´∀`) (2016年8月1日 18時) (レス) id: d9a84170e9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:暁 瑠卯 x他1人 | 作成日時:2014年11月19日 23時