【OL】すきです【短編集】

雨【日春】2 ページ13

【クロスオーバー注意】

あの日から少し日が経った頃に、話を聞いた。

「なぁ、なんで創一は名字教えたくねえんだよ」

きっと言いたくないかもしれないが、それでも、こいつに好意をいつの間にか持っていた俺にとっては聞いておきたいことだった。
創一は、苦笑いを浮かべながら

「名字で呼ばれたくなかったから」

と返してきた。
創一はゆっくり、何故雨に濡れていたのかも、名字で呼ばれたくない理由も話してくれた。
マキ、に振られてから少しした頃、1人の生活が耐えられず家を出てがむしゃらに雨の中歩いてきたらあそこにいた。
そのマキにずっと名字で呼ばれていた、マキに俺が似ているから名字で呼んでほしくなかった。
そんな理由だった。それでも、創一には大変な問題だった。
創一は泣きながら、マキは俺がだめなやつだから、嫌いになった、と籠った声で言っていた。
勝手に体が動き、創一を抱きしめていた。

「ひゅ、うが...？」

泣きながら俺の名前を呼ぶ創一に、俺は

「紀久。お前も、俺のこと下の名前で呼べ」

と伝えた。それから、創一の涙を指で拭き取りながら

「俺ならお前のこと泣かせたりしないから」

とまっすぐ創一を見つめる。
お前に出会って、初めてこんな感情を持った。

「紀久、..」

寂しそうな声で俺の名前を呼ぶ創一の唇をそっと奪う。
俺はお前を守るため。
お前はマキの記憶を無くすため。
色々なことを経験して、そして大人になっていく。

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