水柱の継子は雪のよう【鬼滅】

伍話 ページ5

青年が刀を振ると、怪物は風に吹かれた塵のように消えてしまった








青年は辺りを見回して被害の規模を調べている様子だったが


私の姿を認めると、驚いたような表情をした








「………お前は、………」




何かを言いかけた彼は、その言葉を飲み込んでしまったようだ








「………怪我は、していないか？」





私は首を横に振る






「お前は、ずっとここにいたのか？」




『ここは、私の屋敷だから』






正直、自分の声が冷静すぎて不気味に感じた









何かを考えている様子だった彼は、私に質問を投げかけた









「………お前は、鬼殺隊に入りたいか？」








『きさつたい？………』





「鬼………さっきの奴の同類を狩る仕事だ




　あいつらは、自我を保たず、本能のままに人を喰う」








そうなんだ






「………身寄りはあるのか？」




いない、そんなの





「俺がかつて世話になった人が、鬼殺隊の剣士を育てる先生なんだ


　まあ、入隊する気が無くとも、引取先が見つかるまで位は世話をしてくれるだろうが………」









見知らぬ人に、あまりタダで世話になりたくはない







人の役にたてるようになれば、自分の存在意義も見えてくるだろうか………








『………分かった



　その鬼殺隊？ってやつに入ってみる』









驚いた顔をされた






提案したのはそっちなのに………









「かなりの危険を伴う仕事だ………


　………それでもか？」







だってそれ以外、今は道がない気がする







「………遣いを飛ばすから少し待っていろ


　
　ここから少し遠い場所にある狭霧山に向かうぞ





　………大事な物を纏めておけ








　ああ、それと、俺は冨岡義勇という




　お前を育ててくれるのは、鱗滝左近次という方だ」









冨岡さんは現れた烏の脚に、手紙を巻き付け始めた






………手紙、いつ書いたんだろう………？






烏が手紙を届けるのだろうか




伝書鳩ならぬ伝書烏？








くだらないことを考えながら、何を持って行こうかと悩む





大切な物品というのは、案外見つからないものだな、と思う





収集癖もないので、元々物はあまり持っていないのだ









唯一目に留まったのは、母が送ってくれたあの羽織だった

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