56_◯ ページ7
事実、俺は手越の彼女を気にかけていて。
“好きだ”なんて気持ちを抱いたのは、あの夜の事。
親友の彼女と解っていながら止められなかったのは、彼女の全てを知ってしまったから。
〜〜〜
読みたい作者の新作を予約し忘れて閉店間際まで本屋をハシゴした俺は、すっかり暗くなった夜道を歩いていた。
◯「近道するか」
夜も10時半を回ってる。
早く帰って今日出た課題を片付けようと、いつもなら通らない公園を突っ切ることにした。
まっすぐな銀杏並木を進むと、対面からはフードを目深に被った小柄なランナーが近づいてくる。
チャリン
すれ違いざまに、何かの金属音を察知した。
◯「あのっ!なんか落としましたよ!」
別に知らん振りしたって良かったのに思わず声になったのは、それが明らかに高価な男物で、
「え?」
まだ幼さの残る少女にはイメージがかけ離れていたから。
振り返って胸元を撫でると、彼女は慌ててこちらに戻ってきて
「すみません、ありがとうございますっ」
大事そうにそれを受け取って握りしめる。
◯「結城…?」
その声で初めて、手越の彼女だと認識できた。
「加藤くん?」
互いを認識出来ないくらいの暗闇の中、
◯「こんなっ「今っ」」
お互いに聞きたいことは同じだった。
なんで、こんな時間にここで会ったんだろうってことだ。
お先にどうぞ、そう息を整えながら笑う彼女に一瞬ドキッとしてしまうけど、表情が見えないことに救われた。
◯「お前、こんな時間に出歩いてたら危ねえだろ。」
いいお節介だとは思うけど、ついこの間不審者情報があったばかり。
大事な彼女が危ない目に遭うのは、手越もきっと心配だろう。
「うん…最近太っちゃったからジョギングしてて」
高級ネックレスをギュッと握りしめたまま、学校内では決して聞けない明るい声を出した。
それを嬉しく感じた俺は、“暗いところで話すのもなんだから…”なんて意味不明な理由をこじつけて、ポツリと佇む街灯の下へ彼女を誘う。
彼女の変装の理由を知れる、いい機会だと思った。
◯「痩せる必要ないじゃん、そのままのがいいよ」
出来るだけ明るく言ったつもりだけど、彼女は少し驚いて
「祐也から聞いてると思うけど…」
ゆっくりと穏やかに話し始めた。
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8nocchi(プロフ) - りゅりさん» やっぱ切なくなっちゃいました(^_^;)でも忙しい中でも読んでくれてる方が居て嬉しいです!ほんと、いつもありがとうございます♪ (2015年10月5日 0時) (レス) id: 2b2618977d (このIDを非表示/違反報告)
りゅり - ヤバいです。もう泣いちゃいました。そして、中間試験と英検があるのに毎日チェックしちゃいます。応援しています!リ`▽´ノリ (2015年10月4日 22時) (携帯から) (レス) id: 90d6124633 (このIDを非表示/違反報告)
8nocchi(プロフ) - 充希さん» いつもコメントありがとうございます!ちょっと行き詰まってたけど、頑張ります! (2015年9月3日 20時) (レス) id: 2b2618977d (このIDを非表示/違反報告)
充希 - part2、おめでとうございます!あいかわらず8nocchiさんの作品、ハマってます笑頑張って下さい! (2015年9月3日 19時) (レス) id: 1d8072f2d8 (このIDを非表示/違反報告)
8nocchi(プロフ) - ユウリさん» 40で、好きな子がシゲを好きになって、シゲもその子が好きで。だから“もう”そうはさせない、的な感じです! (2015年8月26日 23時) (レス) id: 2b2618977d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:8nocchi | 作成日時:2015年8月23日 0時