89 ページ40
冬の寒さはなかなか和らぐ事はなく、その朝も酷く冷え込んだ。
「もう行くの?」
久々に貴久の部屋の窓が開いてる。
でもきっと、その窓が開くのは今日で最後。
▽「おう。」
段ボールが積み上げられた閑散とした部屋の中で、貴久は細々した物をリュックに詰めながら答えた。
「貴久、大丈夫?」
新たな門出だと言うのにイマイチ浮かない顔。
新たな環境への不安なんだって思いながら声をかける。
▽「お前こそ、起きれんのかよ」
いや、もしかしたら自分への問いだったのかも知れない。
すぐそばでいつも味方になってくれる貴久が
居なくなるって不安を、どうにかして払拭したかったんだ。
「ちゃんと起きるよ」
そう答えるのが精一杯で。
▽「ちゃんと学校行って、受験勉強頑張れよ」
目の前が真っ暗になる。
▽「な?」
頭に乗っかる手は、いつの間にかゴツゴツと大きい男の手で
「うん…」
でも昔から変わらず、暖かくて優しい。
「貴久っ…」
次はいつ会える?
帰ってくる?
私達、これからもずっと、幼馴染だよね?
…私のこと、忘れないよね?
▽「じゃあな」
そう問うことすら許されないのか、貴久がこっちを向いてくれることはなくて。
まだ冷たい春の風がカーテンを揺らし、机の上には置き去りにされたお菓子の箱からは白いメモが飛んだ。
__袋から出して振ったら、暖かくなるから__
「そんなの知ってるよ、バカ」
貴久なりの優しさがたくさん詰まった箱に向かって、思わず呟く。
雑で、乱暴で。
でも、溢れんばかりに沢山入れられたカイロは、封を開けなくたって暖かかった。
134人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「ジャニーズ」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
8nocchi(プロフ) - りゅりさん» やっぱ切なくなっちゃいました(^_^;)でも忙しい中でも読んでくれてる方が居て嬉しいです!ほんと、いつもありがとうございます♪ (2015年10月5日 0時) (レス) id: 2b2618977d (このIDを非表示/違反報告)
りゅり - ヤバいです。もう泣いちゃいました。そして、中間試験と英検があるのに毎日チェックしちゃいます。応援しています!リ`▽´ノリ (2015年10月4日 22時) (携帯から) (レス) id: 90d6124633 (このIDを非表示/違反報告)
8nocchi(プロフ) - 充希さん» いつもコメントありがとうございます!ちょっと行き詰まってたけど、頑張ります! (2015年9月3日 20時) (レス) id: 2b2618977d (このIDを非表示/違反報告)
充希 - part2、おめでとうございます!あいかわらず8nocchiさんの作品、ハマってます笑頑張って下さい! (2015年9月3日 19時) (レス) id: 1d8072f2d8 (このIDを非表示/違反報告)
8nocchi(プロフ) - ユウリさん» 40で、好きな子がシゲを好きになって、シゲもその子が好きで。だから“もう”そうはさせない、的な感じです! (2015年8月26日 23時) (レス) id: 2b2618977d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:8nocchi | 作成日時:2015年8月23日 0時