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73_▽ ページ24

幾分か和らいだ陽射しが刺す、昼前の保健室。

球技大会の今日、外では全校生徒のおよそ半数がサッカーやらソフトボールで歓声をあげている。

俺は開店休業状態で。

朝の出欠さえクリアすれば、単位は関係無いから、この日は朝から堂々とここで寛げていた。



まぁ、どのみち最近はめっきりここに入り浸っている。

俺は疲れ果てていたんだ。

優等生の、大人びた夏希と付き合うのに。

彼女に歩幅を合わせて、ずっと背伸びをし続ける自分に。



あの日、Aを忘れようと決めた日から、ずっと感じてきた自分が自分じゃないような感覚。

いつか慣れる、そう信じて突っ走ってきたつもりだったのに。

俺たちは近すぎて、お互いを知りすぎていて。

どんなに時間をかけても、この気持ちは消せるどころか、大きくなる一方だった。




「すみませーん、休ませてくださーい」



気怠そうに入ってくる声。

ほぼ毎朝聞いてるから確認しなくたってわかる。



▽「サボり禁止でーす」

「貴久もでしょー疲れたー休ませて」



Aもまた、あれ以来無理をしていた。

あいつが好きな気持ちを抑える為か、バカみたいに明るくて。




▽「無理するからじゃん。作り笑顔、ぶっさいく」




そんなのずっと続く訳ないのに、涙なんて一切見せなくて。




「別に無理なんてしてないし。元からこういう顔!」




ほら、そうやって強がる。

ホントは泣きたいくらい苦しいくせに。

普通でなんて居られないくせに。




▽「頑張りすぎなんだよ、バーカ」



布団に包まるAの頭を軽く叩けば、ズッと鼻水をすする音。

こういう無防備なところが、俺の心を掴んで離してくれない。

でも、久々の二人きりの空間は、何も喋らなくたって、確実に疲れた心を癒してた。




「た…」ガラッ




くぐもった声が聞こえた瞬間、タイミング悪く扉が開く。

“たかひさー”

その声を聞けば、自然とまた背筋に力が入った。

74_◯→←72_♡



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8nocchi(プロフ) - りゅりさん» やっぱ切なくなっちゃいました(^_^;)でも忙しい中でも読んでくれてる方が居て嬉しいです!ほんと、いつもありがとうございます♪ (2015年10月5日 0時) (レス) id: 2b2618977d (このIDを非表示/違反報告)
りゅり - ヤバいです。もう泣いちゃいました。そして、中間試験と英検があるのに毎日チェックしちゃいます。応援しています!リ`▽´ノリ (2015年10月4日 22時) (携帯から) (レス) id: 90d6124633 (このIDを非表示/違反報告)
8nocchi(プロフ) - 充希さん» いつもコメントありがとうございます!ちょっと行き詰まってたけど、頑張ります! (2015年9月3日 20時) (レス) id: 2b2618977d (このIDを非表示/違反報告)
充希 - part2、おめでとうございます!あいかわらず8nocchiさんの作品、ハマってます笑頑張って下さい! (2015年9月3日 19時) (レス) id: 1d8072f2d8 (このIDを非表示/違反報告)
8nocchi(プロフ) - ユウリさん» 40で、好きな子がシゲを好きになって、シゲもその子が好きで。だから“もう”そうはさせない、的な感じです! (2015年8月26日 23時) (レス) id: 2b2618977d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:8nocchi | 作成日時:2015年8月23日 0時

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