気まずい２人 (ページ26)

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行きたいとこページ26

ほぼ毎日のように仕事がある
錦戸さんと、
学生の私がゆっくり会えることは
ほぼなかったけど、

忙しい日も
合間を縫ってメールや電話をしてくれたり、
短い間でも会えそうな時は
会いに来てくれた。

そのくせ門限には厳しくて、
中学生は夜8時以降は外に出たらあかん、

なんてお父さんみたいなことを言ったり、

絶対に家まで送り届けてくれたり、

案外真面目なんだなぁなんて。

そんなことが重なって、
いつの間にか私の中で特別な存在になっていったんだと思う。

その日も、
たった2時間だけのために
寒い中バイク飛ばしてうちまで来てくれた。

『勉強、順調？』

「うん、私優等生なんで(笑)」

亮くんは
そっか、よかった、と笑いながら

『受験終わったらさぁ…

Aちゃんの行きたいとこ行こっか。』

と言った。

「行きたい所…。」

そんなのあんまり考えたことなかったから、
すぐに思い浮かばなかったけど、

「あ！
私、ディズニーランド行きたい！」

この間テレビで見てて
行きたいなぁって
軽く思ってたのを思い出した。

ただ、
言ったものの、すぐに自分で打ち消した。

「あ、やっぱだめだめ。
亮くん、バレるし。

なしなし。」

そう言うと、亮くんは
じっと私の顔を見て、

『いや、バレへんで？
ちゃんと変装もするし大丈夫。
行こ？

俺もAと行きたい。』

って言って笑った。

「ほんとに？」

頭をくしゃくしゃって撫でられて、

『おん、
やから勉強、頑張りや？』

その顔も、
仕草も、

いつの間にか大好きになってた。

でもね、

その約束は実現しなかったね。