玲と王子 ページ30
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「A、話があるの」
「奇遇だな。俺もだ」
病院から態々出てくるレベルの話とは一体なんだ。
俺の件が玲に伝わっているのか、いないのか、わからなかったから態々探しに来たのだが
向こうも話があるのは正直意外だ。
「今日、桐絵ちゃんがAの事を解放してって。態々言いに来たわ。だから私も良い加減にAの事を縛り付けるのは辞めようって思ったんだけれど、必要なさそうで良かったわ」
「安心しろよ。もうお前に縛られてるとか思ってねーよ。それに母さんの意思が別にあることも分かった。俺は俺のやり方で前に進む」
「うん。もう並んで歩いてくれないのね」
「比喩?俺の捉える意味であってんなら、俺がなんて返すか悩むじゃねえか、このアホ」
ごめんね、と力なく笑う玲は何を思うのだろう。
と、考えて「寂しくなるだろ」と冗談のつもりで言うと意外にも「うん」と肯定されて反応に困った。
「お前の為に俺が先を歩いてやるよ、って言えば、安心だろ。安心しろよ、市民のついでにお前の事も守ってやるって言葉は嘘じゃねえから」
「ありがとう、A」
「どういたしまして」
と、頭を撫でてやる。
もうコイツのせいで頭を撫でるのは随分と昔から癖みたいになってしまって嫌だけれど、そんなに嬉しそうな顔をしてくれるなら、もう少し続けてやっても良いか、とも思った。
「桐絵ちゃんには、いつ告白するの?」
「いつが良い?」
「しないでって言ったら、聞いてくれる?」
「どうだろうな、流れで告るかも」
「ふふ、S級昇格ついでに言っちゃった方が楽なんじゃない?Aって女の子扱うの得意だけど、告白なんてした事ないでしょう?」
何でもお見通しだな、俺の幼馴染は。と納得行かなそうに頰を掻くと玲は、ずっと見て来たもの、とやわらかい表情で笑った。
ああ、やめてくれ。俺はその顔をよく知っている。
「……お前、俺の事好きなの?」
「好き。ずっと昔から、今日まで。でももうお終いにしないといけないわね。Aは桐絵ちゃんのものだもの。でも、もし振られたら。私の事も見てくれる?」
「あー……見るかもな」
「ふふ、それなら頑張れなんて絶対に言わないわ」
またね、玲は別れ際に満面の笑みを浮かべて
俺の進行方向とは逆を行く。
「お前は頑張れよ。ランク戦」
「言われなくても」
玲は振り返らずに一言言うと
先程よりもスピードを上げて曲がり角を曲がった
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天霧 - とても良かったです。小南と付き合えて良かったです。推しの一人なので嬉しいです。 (2021年2月20日 3時) (レス) id: 8490818b21 (このIDを非表示/違反報告)
深海(プロフ) - 最高でした (2019年3月7日 20時) (レス) id: af3085a075 (このIDを非表示/違反報告)
ミリア - 凄く気に入った作品で大好きですもし今後他の作品を作る予定があったらワールドトリガーの出水か三輪の姉か妹作品で銀魂かKか転生したらスライムだった件とコラボかトリップか転生した作品が読んでみたいです説明が下手だったらすみませんこれからも凄く応援します。 (2017年10月31日 16時) (レス) id: 14f5017be6 (このIDを非表示/違反報告)
アポロ12号。(プロフ) - 春夏秋冬-ヒトトセ-さん» ありがとうございます!!( ;∀;)すんごい嬉しいです、、、黒バスの方は更新が遅れる時もあるかもしれませんが完結させる為に頑張ります!!! (2017年3月27日 12時) (レス) id: f785069a8a (このIDを非表示/違反報告)
春夏秋冬-ヒトトセ-(プロフ) - 完結おめでとうございます(*^^*) お話が面白くていつも楽しみながら読ませて頂きました!黒バスのほうも興味があるので、是非とも読ませて頂きますね(笑) アポロさんのファンとして、最後までお付き合いさせて頂きます(*^^*) (2017年3月27日 11時) (レス) id: 456f6d648e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:アポロ12号。 | 作成日時:2017年3月12日 12時