恋煩い。[ 2 ] (ページ22)

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俺の足は、吸い込まれるように体育館の中へと向かっていた。

『………もう片付け終わってるんだ』

ほんの数時間前まではバンドやダンスをしていたこの会場も、初めからなにもなかったかのように綺麗に片付いていて、元の姿を取り戻していた。

『…誰もいない、よね』

人気が少ないことをいい事に、ステージに上がって、あの日の彼に向かい合うように演台に立った。

他の人からしたら、ただの演台かもしれない。

だけど、その場所は、俺の高校生活に彩りを与えてくれたあの人＿＿＿＿＿＿＿大我先輩が立って居た場所だった。

凛としている声。
なのにどこか面倒くさそうな雰囲気。
その全てに、心を突き動かされた事を、昨日のことのように思い出せる。

『………大我、せんぱい』

壊れ物を触るかのように、そっと演台に指先で触れる。

『…………すき、好きです。…大我先輩が、世界でいちばん…、大好きです』

この声は届かないとわかっているけれど、想いが溢れ出して止まらなかった。

『…お願い、先輩。………俺に、振り向いてよ…………』

ぽろりと零れた1粒の涙が演台に落ちたのと同時に、自分の遥か後ろから走っているような足音と共に、透き通った声が聞こえた。

「＿＿＿＿＿＿＿＿北斗、！」

『……っ、せんぱ、なんで』