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・京本side
「まじで見てるだけで胃もたれしそう」
『生クリームは飲み物だから』
「………前から思ってたけどお前、実は変なやつだな？」
高地が俺の食べる生クリーム増量のクレープを見て顔を顰める。ソフトクリームみたいに何重にもぐるぐると巻かれていて、注文を取る人に増量分の料金は取られないと聞いたものだから即お願いした。
『そんな見てもあげないからね』
「いや食べたくないからいい」
『美味しいのに』
「勧めてんだか独占したいんだかどっちだよ」
『…北斗だったらきっと食べてくれるのにな』
「……」
『……ごめん、変な空気にした』
「…いや、別に」
今日だけじゃない。
最近やたらと北斗なら〜、と思うことが増えた。
クラスの女子が｢今日お弁当作ったんだー｣と自慢してきても、北斗の方が卵焼き綺麗だったな。とか
体育の授業でリレーがあった時も、北斗足早かったな。とか。
前までこんなじゃなかった。
まあまあ長い付き合いの高地にさえ、こんな感情抱いたこともないのに。訳が分からないこの自分の気持ちに、もどかしさに、少し苛立ちが生まれていた。
「そんな言うなら北斗に会ってくればいいのに」
『…無理だよ。』
「なんで？」
『なんでって……』
去るもの追わず来る者拒まず。それが俺の生き方だった。
だから、自分から話しかけに行くなんてやったことないし、話しかけに行ったとして何を話す？この今抱いている感情の理由も分からないのに。
「俺、北斗といる時の大我好きだったけどな」
『え？』
めちゃくちゃ楽しそうで、羨ましかったもん。そう笑いながら言う高地に心臓がどきりと跳ねたような気がした。
だって、周りから見て羨ましいと思われるほどに楽しいという気持ちが漏れていたなんて、気づきもしなかった。それに高地は滅多にこんな事言わないから余計に驚いた。
｢なにそれ、｣と高地に返そうと口を開いたとき、俺の後ろから、聞き覚えのある声が鼓膜を震わせた。
ここにいるはずない。俺の勝手な幻なんだ。
そう気持ちを落ち着けたいのに、その考えを否定するように俺の目の前に立った彼女は、目をじっと見つめてこう言った。
「久しぶり、大我くん。」
『……真、弥』
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作者名：みょん | 作成日時：2023年12月21日 17時
