↓part1 ページ10
クローゼットの中から服を出し、身に付ける
クローゼットの中にキラっと光るものがひとつあった
女物の香水だ
意識しなくとも俺の手は香水を手に取っていた
先程あんな話をしたからなのか、分からない
シュッと一振かけた
あいつらに見つかったら、めんどくさいことになりそうだな
ふわりと香水の匂いが部屋中に広がる
あいつの匂い、が
別れた恋人が忘れていったものをまだ置いているなんて
さっさと捨てればいいものを…
まだ未練が残っているのは確かだった
自分から別れを告げたくせに
フッと微笑して、香水を元の位置に戻した
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外の空気は冷たく突き刺すようだった
さっきのコーヒーの温かさが恋しくなる
歩道橋の上で眺めてみると、アイドリッシュセブンのMVがビルに映し出されていた
そこには、一年前とさほど変わらない彼がいた
彼から別れを告げられて約1年
何度も忘れようとした
だけど、あきらめらなくて
やっと決心しようとしたときには、彼はメディアに引っ張りだこの人気アイドルとなっていた
忘れたくても忘れられない
嫌でも目に入ってくる
話せないし、触れられもしない
それなのに、姿だけは私の目に映ってくる
近くにありすぎて、忘れるなんて無理だよ
何故か右手が冷たく感じて、かじかんだ手に息を吹きかけた
歩道橋の階段を一人で降りていく
自宅からは遠いこの街を歩くのは、きっとここが彼との思い出の場所だから
もう一年経つんだから、いい加減にケジメをつけないと
応援しなきゃ、頑張ってるんだから
私なんかよりも、ずっと…
そんなことはわかってる
頭では理解してるけど、心が言うことを聞かない
再び彼が出ているモニターに目を移す
画面の中の世界は、キラキラしていてとても魅力的にみえる
でもね、私は隣にいてくれる世界のほうがいいな
画面の中なんか抜け出して、こっちに来てよ
なんて、怒られちゃうかな
私は思わず足を止めた
ここ、大和とよく待ち合わせしたところだ
待ち合わせをしていた風景が頭に浮かぶ
待ち合わせ場所に近づくと、冷たい風が吹いた
寒い…
冬ってこんなに寒かったっけ
マフラーに顔を埋めた
それでも、寒さは和らがない
おかしいな、去年も巻いたマフラーなのに
どうしてこんなにぬくもりが足りないんだろう
私は寒さに凍えながら、ふと目を閉じた
↓part2→←set 4 月明かりイルミネイト【二階堂大和】
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作者名：ひな x他1人 | 作成日時：2018年5月1日 0時
