恋の欲張りセット【アイナナ】 (ページ24)

今日:2 hit、昨日:1 hit、合計:9,148 hit

↓part1 ページ24

雨に打たれる音、

誰かの乱れている呼吸、

誰かに包まれている温かい体温

だれ？

あなたはだれなの？

かろうじて目を開けようにも、ぼんやりとしか見えない

目に飛び込んだのが、優しい青色だったことしかわからなかった

目を開けると、そこは私の部屋だった

｢A！あなた起きたのね！びっくりしたわよ。大雨のなか1人で倒れて熱までだして」

ちょうどよく入ってきたお母さんは、キンキンに冷えたタオルを私の額に乗せた

｢冷たっ…1人で倒れてって、私誰かに助けられたんじゃないの？｣

｢知り合いの方が、Aが1人で倒れてるのを見つけてくれたらしいのよ｣

｢そうじゃなくて、おかしいなぁ…抱きかかえられた気がするんだけど｣

｢あら、そうなの？でも意識も朦朧してたから、夢だったんじゃない？｣

はっきりと覚えていたわけじゃないし、そうなのかもしれないけど

私はあまり腑に落ちなかった

でも私を助けてくれた人がいたのなら、お礼を言いたかった

俺はまたいつもの森へと出かけた

日当たりが良く、気持ちのいい天気だった

道端に珍しい青色の花が咲いていた

俺は何を思ったのか花を摘んで、木の下に座った

地面を擦る音が聞こえ、木の影へと隠れる

(誰だ…？あ、あいつは)

目を引く赤色の頭巾を被った女の子、そう環が助けた少女だ

もう熱は大丈夫なのか？とこっそり見てると、少女の悩んだ声が聞こえてきた

｢うーん、ないなぁ…花はもう散っちゃったのかな｣

少女は茶色のカゴを揺らせながら、辺りを散策していた

俺は手の中の青い花を見る

(どうせ使い道はない…あいつに渡した方が…って人間だぞ)

少し残念そうな表情の少女を見ると、なんだなほっとけなかったんだ

だから、見つからないように木の手前に花を置いた

変に緊張していた俺は僅かながら息を止めていた

ゴトッと何かを置く音を残して、少女は先を歩いた

なんの音かと見てみると、そこには花の代わりに、赤いリンゴが1つ置いてあった

律儀なやつ

このことそーちゃんに言ったら怒られるんだろうなぁ

でも俺が置いた花を手に持って行くあの子の嬉しそうな顔は忘れられそうにない