↓part3 ページ15
傘が雨に打ち付けられている音が響く
水たまりを踏みしめる音は二人分、でも傘はひとつ
まさか、三月くんと相合傘をしてるなんて…！
ダメ…嬉しすぎて死ぬ、死んでしまう
自然と顔が近くなり、胸が高鳴った
ああ、もう緊張で、息が詰まりそう
動揺している私とは裏腹に、三月くんは楽しそうに話をしている
二人っきりの会話なんて、夏祭り以来だ
三月くんに触れている右手が震えた
今なら、言えるかもしれない、好きだって
告白して、恋人になる
今だって、傘じゃなくて三月くんの手と繋ぎたいし
もちろんそれが理想だけど、今は好きだと伝えたい、その気持ちが強かった
どうしよう、どうしたら……
意気地無しの私はなかなか言い出せなかった
いっそのこと、テレパシーかなにかで私の想いを三月くんに届けられたらいいのに…
「もうすぐ、駅だな。Aもあの駅だよな？」
「うん、」
私は不意に泣きそうになった
お願い、終わらないで
まだ一緒にいたいよ
いまこの瞬間、時間が止まったら、どんなにいいんだろう
涙を堪えながらも、三月くんと相合傘をして一緒に帰っていることの嬉しさを噛み締めた
色々な感情が複雑に絡み合って、心の中は混沌としている
もう、こんな時間来ないんだろうな
三月くんと一緒に帰るなんて、夢のまた夢だ
今は傘をはんぶんこにして、お互いの距離はとても近い
でも、なんでかな、三月くんが遠くに感じるよ
無慈悲に時間は過ぎ、あっという間に駅に着いた
「俺もAも、濡れずにすんでよかったな」
「うん、ありがとう、三月くん」
「じゃあ、俺○○線だから」
そうか、もう行っちゃうんだ…
そうだよね、一緒にいる理由なくなっちゃったし
「……」
「…A？」
.
『今すぐ、私を抱きしめて！』
.
「バイバイ三月くん、また明日ね」
「おう！また明日！」
なんてね…
.
《メルト》By: ryo
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作者名：ひな x他1人 | 作成日時：2018年5月1日 0時
