恋の欲張りセット【アイナナ】 (ページ14)

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「最近、変わったよな。なんか前よりも明るくなった気がする」

『そ、そうかな…？』

「ああ、前髪も切ったしな」

あの日は何も話しかけられなかったから、一人で落胆してたけど、切ったの気づいてくれてたのか

嬉しさで顔が綻んでいくのが容易にわかった

『な、なんか、学校以外でクラスの子と会うのって新鮮だよね。私服だし』

「そうだな。それはそうと、今日のAの服、いつもと印象違って良いよな。すげー似合ってる」

どうしてそのような台詞がさらりと言えるんだろう

狙って言ってないのはわかってるけど、ドキドキしすぎて溶けてしまいそう

最近は目を合わせてはなせるようになったのに、これじゃ目なんか合わせられない

外が真っ暗でよかった、きっと私の顔は赤く染まっている

好き、三月くんのことが好き

恋に恋焦がれているのではなく、ただただ三月くんが好きだ

こんなこと、絶対に言えないけど

線香花火に目を移したまま、控えめにお礼を言ったのだった

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1ヶ月後

『うわ、結構雨降ってる…』

下駄箱で曇天模様の空を見上げた

おかしいな、天気予報じゃ晴れだったのに

「あー、雨降ってんな…」

声を聞いた瞬間ビクッと肩が揺れる

み、三月くんだ

「お、Aじゃん。なんだ、お前傘忘れたのか？」

『え、いや…』

あたふたしていると、傘が差し出された

「俺走って帰るからさ、これ使えよ」

反射的に、三月くんの傘を手に取った

カバンの中には折りたたみ傘が入っている

断ることもできたけど、なんだか無下に出来なくて結局受け取ってしまった

三月くんに傘を返せばいいのに、できない自分
に嫌気がさしてため息が出た

早く言え、私

傘が2個あってもしょうがないでしょ

私に傘を貸してくれたことがうれしくて、なかなか言い出せなかった

モタモタしていると三月くんがカバンを頭に乗せ、帰ろうとしていたので、咄嗟に引き止めた

『三月くん！！あの、やっぱり、大丈夫。三月くんが使って？風邪ひいちゃうよ』

「いいって！Aが使えよ」

『借りたら三月くん濡れちゃう』

「別に帰って乾かせばいいだろ」

『でも…！』

「……わかったわかった、しょうがねえから、一緒に入ってやるよ」

隣にいる三月くんはそう言って笑った

その瞬間、恋に落ちる音がした