恋の欲張りセット【アイナナ】 (ページ11)

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「大和さん！付き添わなくて大丈夫ですか？」

『いい、いい。お兄さんのことは気にしなくていいから』

「でも！」

『仕事、溜まってるんだって？』

「うっ、はい…恥ずかしながら」

『だったら、俺に構ってる暇はないな』

「すいません…私が不甲斐ないばかりに」

『俺は全然構わないけど。あっ、タクシー来た』

「あの、付き添えなくてごめんなさい！仕事、終わらせてきます！」

『はいはーい』

電話を切りながら、タクシーに乗り込んだ

ガラス越しに窓の外を見ると、せわしく人々が行き交っていた

そういえば、ここらへんってAとよく来てたところだな

二人で手を繋いで、街を歩いてたっけか

たった一年前なのに、すごく昔のように感じる

一年前までは見慣れたシルエットが街の中で揺らいだきがした

いるわけねえのにな…

何を期待しているんだ、俺は

今日は変な話をしたおかげか、どうもAのことが頻繁に頭をよぎる

そしてAのことを思い出すと、笑顔ばかりしかでてこない

いつも、よく笑うやつだった

俺は、Aの笑顔が好きだ、……好きだったんだ

Aが笑っていてくれるならそれでいい

Aの隣が俺じゃなかったとしても……

俺はAを幸せにすることはできない

だから俺の事なんか綺麗さっぱり忘れて

幸せに、なってくれ

遠くに見えるイルミネーションに届かない願いをかけた

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少し歩くとイルミネーションがそこら中に広がっていた

真っ暗な世界を照らす光はとても綺麗で、息を止めた

一年前には近い存在だったのに、今は遠い存在だ

何をしたって、もう会えない

どんなに手を伸ばしたって、届かない

それでも、まだ好きなの

大和はもう私のことなんて忘れてるかもしれない

引きずっているのは私だけだ

でもね、私も少しずつ前に進むよ

過去に捕われたまま生きていたってしょうがないんだから

このイルミネーションのように綺麗な思い出として、記憶にしてしまおう

貴方を想うのは、この瞬間が最後にする

出しかけた愛の言葉は、白い吐息となって消えていった