𝟑𝟔 ページ37
研修は無事に終わり、新幹線で3時間かけて地元に帰ってきた。見慣れた景色にホッとしつつ、東京に行く前の自分と今の自分にギャップがありすぎて、もしかして長い夢だったんじゃないかとまで思う。でも、確かに、自分の指でだいすきな人の指輪が輝いており、スマホを見ると彼からの通知がある。『着いたら連絡してよ』と言われていたので、目の前の景色を撮り、『帰ってきました』というメッセージと共に送る。すぐに既読がつき『おかえり』と共に、彼の目の前の景色の写真も送られてきた。どうやら楽屋でメンバーと筋トレをしているみたいだ。
…本当に、つながってるんやなぁと実感する。
あの日、気持ちを確かめ合ってからは、一度も会うことはできなかった。あれから彼らはメディアに引っ張りだこ、私の研修も大詰めで、お互いに忙しくしていた。このまま、私たちの関係はなかったことになるのではないかと思うこともあった。良い夢を見させてもらったと、自分に言い聞かせるところまで来ていた。帰る日の前日、荷物が届いた。紗奈ちゃんが、「これAちゃん宛てや」と渡してくれた。ここの住所が分かってて私の名前ということは彼だろうか、と、沈んでいた気持ちは一気に浮かれた。心臓の高鳴りを感じながら大きな包装を外していくと、中からピンクゴールドのネックレスと、綺麗な24本のバラの花束。紗奈ちゃんがすぐに花言葉を調べてくれて、私の口角は上がりっぱなし。
出るわけがないと思い、軽い気持ちで健くんに電話をかけた。
「もしもし？」
『えっ？！でた！！！』
「そりゃ出るやろ、かかってきたら」
『いや、絶対仕事やろから出んと思って、、』
「あ、荷物とどいた？俺の渾身のプレゼント」
『うん、今見た。めっちゃ嬉しいありがとう』
「直接渡したかった、ごめんな」
『ううん、ほんまにありがと〜』
「よかった、喜んでくれて」
『…ありがとう』
「え？泣いてる？」
『、、泣くわ、こんなん急にされたら！』
「うわ〜その顔みたい」
『また今度な』
「うん、、、、明日帰るんやんな？」
『うん』
「家着いたら連絡して、心配やから」
『お父さんみたい』
「彼女の義務やから、そーゆーの」
『はは、分かった、ちゃんと連絡するから』
「気をつけてな、、あ、俺そろそろ行かな」
『ごめん、忙しいのに、ありがとう』
「いいや、ほなな」
『うん、頑張って』
「…まじで元気出るわ、ありがと」
こうして、私たちは遠距離に突入した
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作者名：あんに | 作成日時：2023年10月31日 23時
