𝟐𝟐 ページ23
💜side
前会った時とは違う、スーツでビシッとしていて
ほとんど化粧をしてなさそうな素に近い顔を見て
本当に美人な姉弟やなと思った
晴人がいる手前、妙に落ち着いてAさんと話せた
2人きりなら、俺は間違いなくテンパっていた
Aさんが来る前に、晴人の韓国での生活のことを聞かせてもらった
晴人がしんどいとき、Aさんも看護学生として実習や国家試験の勉強で忙しいことを知っていて、連絡を絶った時期があったらしい
この2人はお互いを思いやりすぎだ
「ねーちゃんは、僕と違ってめちゃくちゃ抱え込む。で、僕よりも負けず嫌い。東京の研修だって、絶対辛いはずやのにそれを口に出さへんし。悪く言うと扱いにくい姉。笑」
うん、そんな感じする
今俺の横で、ボロボロ涙をこぼすAさん
何年も弟を心配して、仕事も頑張って
きっと今、溜め込んでたものに蓋をしきれなくなってるんやろうな
初めて会ったときも、今日会ったときも
ファンって感じももちろんある、でも
気丈に振る舞うというか
どこか冷めた、1人で生きていきますみたいな
TPOわきまえます、みたいな
そんな印象があった
今は違う
この人を精神的に守ってくれる強い味方
どんなときもそばにいるような人が
おるんやろうか
今にも消えてしまいそうなAさんを
せめて今だけは、と
小さな手を握り、抱き寄せた
『…そんな泣かんとって、綺麗な顔がどんどん赤くなる』
「…」
『何もできんって言うけど、そんな事ないと思う
自分が世界で1人きりちゃうんやって思えるだけでも違うから。晴人はAさんや親御さんが心配してくれてるって自覚できただけでも心強かったと思う』
黙って頷き、またはらりと涙を流すAさんが
あまりにも儚くて、握る手に力がこもる
新しくグラスに入れた氷が溶けてしまうころには
Aさんも落ち着き、笑顔を見せてくれた
もっとこうしていたい、と思った
俺の隣にいるのはファンとは思えなくて
1人の女の子、として認識していた
でもなんとなく2人とも
このままではいけないと察したような
そんな空気が流れた
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作者名：あんに | 作成日時：2023年10月31日 23時
