霞柱の許嫁が蝶屋敷の食事係の私だった件。【時透無一郎】

参拾参ノ話 #呼び声 ページ38

無一郎side



…彼女は一命は取り留めた。



しかし、美月の体は包帯だらけだ。





深かった傷は縫い、



失った血を輸血した。





…どうやら美月は稀血だったらしく、


合う輸液を探すのに手こずっていた。






…美月ごめん。


本当にごめん。




僕がもっと早く帰っていれば、


彼女は明日にでも元気になるかもしれなかったのだ。




笑顔で、｢無一郎さん！｣と名前を呼んでくれただろう。




僕は美月の小さくて細い手を握り、


ずっと涙を流していた。









無｢…ごめん…痛かったよね｣









美月side



…ん…？ここはどこ…なの……？


私は真っ暗闇の道を、行く宛てもなく歩いていた。








…私は確か、


屋敷に侵入してきた鬼と戦って…それから…





ズキン、と頭が痛む。




??｢…ごめん、ほんとにごめん…

こんなに小さな体で鬼と戦ったのか｣





誰かが私を呼ぶ。


…誰…だっけ？







誰かが泣いてる…



…私のために…？






聞き覚えのあるこの声の持ち主を


私は知っている気がした。






??｢美月！あっちに行っちゃだめです…！｣






本能でその言葉に促され、

私は元来た道に引き返す。





…私は、あっちに行っちゃ行けないんだ。



戻らなきゃ…誰かが呼んでる。






…私がしばらく歩くと、段々と光が見えてくる。



…あっちは、現実？それとも…




…天国……？




でも私はこっちに行くべきなのだと感じた方へと歩みを進めた。

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