入学式その4 【リーマス】 ページ5
大きな扉の前で11歳の少年少女が鼓動を早めていた。
これからこの学校での生活が始まる。
まずはその第1歩だ。
「それでは、今から皆さんの組み分けをします。扉が開いたらまっすぐ進み、階段の前で止まりなさい。」
この学校では伝統的に、帽子を使っての組み分けをする。
緊張してきた。
「もう少しここで待っていて下さいね。」
ローブを身にまとい、帽子をかぶった女性が姿を消す。
そして、同時に僕はローブの裾に違和感を感じた。
白い。白い狼だ。小さな体に、青い目をした狼。
僕のローブの裾を嗅いでいる。
「わ、ちょっと！誰かのペットかい？」
そう言いながら僕が抱きあげようと、柔らかそうなその背中に手を伸ばした瞬間、
狼はいなくなった。
そのかわり、だろうか。
そこには白い髪と青い瞳を持った、少女が立っていた。
「ごめんなさいね。あなた、とても懐かしい匂いがしたの。」
少女は鈴のなるような声で、優しく話す。
「私も新入生なの。よろしくね？」
「う、うん…」
あまりのことに、驚きを隠せない。
動物が、人になるなんて！
そんなの、僕みたいに穢らわしいものだけだと思っていた。
でも、他にも動物になれる人はいるのか。
なんだか仲間のようで、嬉しい。
「わたし、A・グリフィズよ。」
「リーマス・ルーピンだよ。よろしく。」
Aの小さな手を握る。
すると、誰か叫んだ。
「すっげぇ！！あの子だぜ、白い狼のアニメーガス！！」
皆がこっちを見ていた。
Aもそれに気づき、驚いている。
「アニメーガス？って？」
僕は何も知らない。
このAがアニメーガス、というものなのか。
「アニメーガスっていうのはね、私みたいに何かしら決まったら動物に姿を変えちゃうの。私、一歳頃から出来るのよ。ちょっと誰かが教えてくれたみたいなのよね。」
「おかしいだろ、普通アニメーガスは三年以上の習得期間がある。」
僕の隣にいるシリウスが少女を訝しげに見る。
しかし少女は、笑って言った。
「私も、なんでこんな事出来るのか知らないわ。でもこの力が無かったら生きて来れなかったのよ。きっとね。」
なんだろう。こんなにAは笑顔なのに、
どこか寂しそうだ。
「でも、白い狼可愛いでしょ？」
長い白い髪をふわりとなびかせながら首を傾げるA。
……可愛い、なんて。
僕なんかが、そんなふうに思っていいのかな。
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作者名：とわ | 作成日時：2021年1月31日 22時
