【HP夢】小さな狼の子【リーマス・ルーピン】 (ページ21)

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一族【アーサー】ページ21

「もうすぐ、あやつが学びに出てから一年が経ちますな。8月には帰って来るのでしょう？」

私(アーサー)の隣の、大きな狼が子供の毛繕いをしながら話しかける。

「もちろん、帰らせるつもりだ。もうすぐ手紙を寄越すだろうさ。」

「そりゃあ、楽しみだ。この子にも早く会わせてやらにゃあ。」

１ヶ月前に産まれたばかりの子に愛しそうに頬ずりをし、彼は巣に帰って行った。

「アーサー、Aはどんな魔法を習って来るんでしょうね。餌でも取ってくれるかい？」

「未成年魔法使いは学校外での魔法の使用は禁止だ。そりゃあまだ先の話さ。」

幼なじみの老人の狼はぐでんと寝っ転がりながらこちらをみた。

「Aもいつか男を連れてくんのかねぇ。」

「それは本人の勝手だ。そうなったら好きにさせるさ。誰だろうとあいつが幸せのようならそれで良いさ。」

「…おめぇ、丸くなったもんだな。」

「ダンブルドアのおかげでな。」

ダンブルドアは、この森を侵略しようとした者から我々一族を守って下さった。
それまで私は、人間も仲間すらも信用してはいなかったが助けて貰ったあの日が忘れられないのだ。
その恩を胸に、今は長として一族を守っている。

「ま、あいつがひょこひょこ来たら教えてくれや。飯の1つでも取ってくるからよ。」

「あぁ。そうしてくれ。」

皆が眠りに付き、静寂が訪れた満月の日。
そういえば、Aがこの森の神木の下に置かれていたのも満月の日だった。

そしてあの時の恩を返すつもりでその子を育ててやれ、とダンブルドアが伝えに来たのは次の満月の時だった。

何かと満月は狼に縁があるらしい。
あいつは、母親が狼人間だった。
父親も狼人間だった。

「フェンリール、なぜあそこまでしてあの子に固執するのだ…」

Aの父親はフェンリール・グレイバック。
その残忍さから最も恐れられている狼人間。
彼の子供なのだ。

あいつは、何とかしてあの子を連れ去ろうとする。
本来、父親の登場とあらば明け渡してやりたいものだがあいつは子供をよく餌食にする。
ライカンスローピー、狼人間にしてしまう。
その絶望感は凄まじい。

あの子において最も大きな脅威と言えるだろう。
だから私はあの子を目の届く範囲に置いた。
クリスマス以外は。

クリスマスになると、決まってあいつはどこかへ行ってしまうのだ。
魔法の痕跡も無いというに。

「さて、寝るとするか。」

その時、遠吠えが聞こえた。