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とある生徒のレポート ページ7

4年前、月皇遥斗世代がまだ綾薙に入学したばかりの頃、当時スター枠のトップスターは"鳳湊"という普通科出身の生徒であった。彼は外部で特別な英才教育を受けた訳ではない。彼がスター枠入りを志願した理由は《音楽が好きだから》《月皇遥斗に誘われたから》という単純明快なものである。それなりの技術はあるが、必要な技術全てが備わっているわけではない。所謂、及第点程度である。
 当時の華桜会が彼をトップスターに置いた理由は彼のもつ天賦の才能《異常な表現力》にあった。これは推測でしかないが、その時行ったという喜怒哀楽を表現する試験で常人では考えられない表現をしたのではないだろうか。
 何があったのか定かではないが、今はスターオブスターのリーダーは月皇遥斗ではなく鳳湊であったとだけ言っておこう。
 その彼は、綾薙学園を自主退学してしまっている。明確な理由は記録に残っていない。いや、意図的に消されたのだろう。
 鳳湊に関する最後の記録は、あの凄惨な殺人未遂事件だった。きっと今後綾薙ではこれ以上の最悪な事件が起こることはないだろう。
 同年の綾薙祭において、特別プログラムが行われた。《スペシャルシャッフルユニット》に参加したのは月皇遥斗、魚住朝喜、早乙女律、双葉大我、鳳湊の5人であった。次期・華桜会最有力候補たちを紹介するという目的もあったようだが、そんなもの彼らには無意味だったに違いない。それはさておき、ライブは野外ステージで行われた。キャパの制限なく人を集められるかららしい。
 しかし、そのライブ中、悲劇は起きた。
 月皇遥斗と双葉大我の頭上から照明が落下してきたのだ。2人は無事だった。しかし2人を突き飛ばして守った鳳湊が犠牲になってしまった。当時その場にいた人々は口々にこう言った。
『校外にまで悲鳴が響いた』
『呆然とする2人の目前に血の海が広がった』
残る記録は文面のみだが相当悲惨であったことは間違いない。救急搬送された彼はすぐICUに入れられ、当時の関係者は誰一人面会を許されなかった。そのまま彼は綾薙学園を退学、入院していたはずの病院からも消え、消息不明となったのである。
 殺人未遂の犯人は生徒のモンスターペアレントだった。事情聴取で、いい気になっている遥斗とたいした取り柄もない大我が候補であったことが許せなかったと語った。
 鳳湊は僕が生涯最も尊敬する役者である。どうかその役者生命が回復される日が来ることを願う。

1年A組 柊翼

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作者名:水信 | 作成日時:2019年6月17日 23時

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