３９２話【結弦side】 ページ49
昌磨｢ねえ、ゆづくん｣
結弦｢んー？｣
昌磨｢Aちゃん大丈夫なの？｣
結弦｢なにが？｣
ショーのリハの休憩中、隣りにいた昌磨がボソッと聞いてきた。
大丈夫？って、いきなり言われても。
昌磨｢中国人選手とのやつ……日に日にネットが荒れてるんだけど。今なんてゆづくんとAちゃんの絡みすら許せないとか言われてるよ。あんまり口にして言いたくない言葉とかも……｣
結弦｢へぇ……｣
Aちゃん、ほとんどネット見ないって言ってたし、今の所はそんなに気にしてないんだろうけど。
そんなに荒れてきてるとなると、本人の耳に入るのも時間の問題なのかな。
昌磨｢Aちゃんに聞いたってどうせ大丈夫しか言わないし。本当のところはどうなんだろ？って思って｣
結弦｢なに？そんなにAちゃんのことが気になる？｣
昌磨｢えっ｣
結弦｢俺がソチにいる時、昌磨、Aちゃんのこと好きかもって言ってたじゃん｣
そう言うと昌磨は急に目が泳ぎだして、顔どころか耳まで真っ赤にしてる。
なんだよ、ちょっと可愛いんだけど(笑)
結弦｢いいじゃん。そんなに気になるなら昌磨が守ってあげたら？｣
昌磨｢え、でもゆづくんはAちゃんのこと……｣
結弦｢好きだよ。だけど俺、振られてるから｣
昌磨｢え！！｣
昌磨が珍しく大きな声を出すものだから、周りにいたスケーターが一斉にこちらに振り返る。
ノブくんなんか首突っ込みたくて、｢どうしたー？なんかあったん？｣なんて近づいてくるから｢おじさんには分からない話だよ｣と追い払った。
結弦｢嘘じゃないよ。本気で振られたから。ていうか、振ってもらった、のかな？｣
昌磨｢どういうこと？｣
結弦｢ないしょ！だけど俺だってまだ諦めたわけじゃないからな？｣
昌磨｢じゃあなんで守ってあげたら、とか言うの？俺、ライバルになるんだよ？｣
結弦｢俺はなにごともフェアにいきたいの。相手を蹴落として得たものなんて、なんの価値もないし。正々堂々と立ち向かって得られるからこそ、そこに幸せが付いてくると思うから｣
昌磨｢深い……｣
結弦｢だから昌磨も、俺に遠慮すんなよ？そんなのされたら俺、昌磨のこと嫌いになっちゃうかも｣
昌磨｢えっ｣
結弦｢冗談だよ(笑)もー、昌磨はいちいち可愛いなあ｣
スケート以外でもライバルになるなんて思ってなかったけど、昌磨と戦うのは悪い気はしないよ。
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作者名：優里奈 | 作成日時：2021年7月18日 15時
