氷上で煌めく太陽８ (ページ48)

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３９１話【結弦side】ページ48

美姫さんに散々Aちゃんのことを言われて、ぶっちゃけムカついてしょうがなかった。

だけど普段の美姫さんはめっちゃいいお姉さんだし昔からお世話になってる先輩だ。
あの時はお酒が入ってたから、あんなこと言っただけだって思いたい。

声が聞きたくてかけた電話も、昌磨と一緒だと知って嬉しさ半減。
こんなあからさまに嫌悪するなんて、俺は心が狭いのかも。

『俺、Aちゃんのこと好きかもしんない』

ソチにいるときに昌磨から言われた言葉。

本心かは分からないけど、そんなこと言われてああそうですかってスルーできる余裕なんて無いから。

電話のあとはますます気持ちがスッキリしなくなっちゃって、あまり眠れないまま朝になった。

心も体もシャキッとしないまま大阪入り。

移動中のタクシーの中でカナがずっと喋ってくるから、午後のリハーサルが待ってるのに体力吸い取られた気分。

ホテルに着くと、元気にはしゃぎながら久しぶりだねと再会を喜んでるカナとAちゃん。

今の俺にそんな元気無いわ……と思いながら、先に部屋に向かう。

昌磨にも｢ひさしぶり｣と声をかけると、｢うん｣と短い返事が返ってきた。
それ以上の会話を続ける気力は持ち合わせてなくて、｢またあとでね｣と言ってエレベーターを目指す。

エレベーターが来るのを待っていると、｢ゆづくん！｣と背後からAちゃんの声。

結弦｢……どうしたの？｣

さっきとは違って、険しい顔をしたAちゃんが立っていた。
唇をかみしめて、泣きそうになってるようにも見える。

え？
この僅かな時間の間に何があったの？

｢ゆづくん、ごめんね｣

結弦｢え？なに？なんで謝るの？｣

｢だって。ゆづくん私のせいで嫌な思いしたんでしょ？私のことで絡まれて、何言われたかわかんないけど……許せないって思うくらい私のことで気分悪くしたんでしょ？｣

本当にごめんなさい
でも、ありがとう

深く頭を下げたまま、ギュッと拳を握りしめるAちゃん。
そんな姿を見たら、不思議なことに今までのモヤモヤがスッと消えてなくなった。

結弦｢気にしなくていいよ。Aちゃんのありがとうって言葉で全部チャラになったから。今日明日、頑張ろうね｣

そう言って頭をポンポン、と撫でると、ホッとしたように笑ってくれた。

うん。
Aちゃんはやっぱり笑顔のほうがいいよ。