３９０話 ページ47
まだかな？
いつ来るのかな？
昌磨｢Aちゃん、落ち着いて(笑)｣
｢だって！みんなお昼前に着くって言ってたのにもう11時半だよ？｣
遅いなあ〜、まだかなあ〜とキョロキョロしていると、後ろから昌磨くんのため息が聞こえた。
するとタクシーが2台停まって、明子さんを先頭にみんながやってきた。
私に気づいた明子さんが、笑顔で手を振ってくれる。
明子｢Aちゃん、昌磨も。わざわざありがとう｣
昌磨｢Aちゃん、なかなか来ないって言ってずっとソワソワしてたんですよ｣
明子｢ごめんね？渋滞でタクシーが進まなくて。連絡入れればよかったね｣
佳菜子｢Aちゃーん！やっほぅ！｣
明子さんの奥に、笑顔の佳菜子ちゃんとちょっとお疲れ気味のゆづくんが見えた。
｢佳菜子ちゃん！会いたかった〜！｣
二人でキャアキャアと再会を喜んでいると、｢女子は元気だね……｣とゆづくんが力なく笑う。
先に部屋行ってるね、とゆづくんは一人でエレベーターのほうへ行ってしまった。
｢……ゆづくん、眠れなかったのかな？｣
今日のリハ大丈夫かな？なんて思っていると、佳菜子ちゃんがニコニコしながら｢あのね、｣と声をひそめて話しだした。
カナ｢ゆづ、昨日美姫ちゃんにめっちゃ絡まれてさあ。珍しくイライラしてたの｣
｢へぇ……｣
美姫ちゃんっていうのは、きっと安藤美姫さんのことだろう。
でも珍しいな。いつも穏やかで、私ならイラッとしてしまいそうなことでも上手に受け流すのに。
どんな絡まれ方をしたんだろ？
カナ｢昨日、ゆづと電話してたでしょ？｣
｢あー、うん｣
カナ｢あの時がイライラＭＡＸだったはずだよ。ギュッと目を瞑ってため息吐いて。かと思えば一人で外に出てってさ｣
｢そうだったんだ……。どうしたの？って聞いたら、声が聞きたくなったって言ってたから、ホームシックにでもなったのかと｣
カナ｢ホームシックって！今さらそれは無いよ〜(笑)｣
明子｢ゆづね、Aちゃん絡みでいろいろ言われて許せなかったみたい。でも美姫は普段はとってもいい子だから。ゆづもそれを分かってるから、強く言えなかったみたいで｣
どこまでも周りのことを考えて動く子よね、とゆづくんの後ろ姿を見ながらフフッと笑う明子さん。
そっか。そんなことがあったんだ
｢私、ちょっとゆづくんのとこ行ってくる｣
そう言って駆け出した私の後ろ姿を、昌磨くんがジッと見つめていたなんてこのときは全然知る由もなかった。
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作者名：優里奈 | 作成日時：2021年7月18日 15時
