氷上で煌めく太陽８ (ページ5)

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３４８話【結弦side】ページ5

最初のトゥループ、悔しいな。

自信あっただけに、いきなりあれはなあ。

でも終わったことを悔やんでる暇は無い。
まだ試合は終わってないんだ。

ハビ｢ユヅル、何を難しい顔をしてるの？｣

結弦｢え？俺そんな顔してた？｣

ハビ｢してたしてた。こーんな｣

そう言ってハビは眉間にギュッとシワを寄せて、手で目尻を上に釣り上げる仕草をする。

え、俺そんな変な顔してた？

ハビ｢ハハッ。そんな顔したら、ユヅルの綺麗な顔が台無しだよ｣

結弦｢俺、フリーは負けないからね｣

ユヅルは負けず嫌いだね！なんてハビに頭を撫でられて、やめてよ、なんて言いながら頭に置かれた手を避ける。

エレベーターを降りて部屋のほうへ向かって歩くと、つきあたりの窓際に見覚えのある後ろ姿。

ハビ｢あれは……Aじゃないか？電話かな？誰かと話してるみたいだ｣

先に部屋にたどり着いたハビは｢また明日｣と自分の部屋に入っていった。

Aちゃんの邪魔をしたら悪いなと思って、声をかけないで置こうと自分の部屋のドアに手をかけたけど……

｢早く昌磨くんに会いたいなー。大阪で会えるの、楽しみにしてるね｣

楽しそうに話すAちゃんが何気なく放った言葉に、俺は全身が固まったように動けなくなった。

電話の相手、昌磨だったんだ。

会いたい、か……。

俺は毎日のように顔を合わせてるから、そんなこと言われたこと無いな。

昌磨とは出場する大会も違うし、普段は日本とカナダで物理的に離れすぎてる。
簡単には会えない２人だから、会いたいって思うのは普通だよな。

って、俺、なんでこんなに動揺してんの？

俺、Aちゃんに振られたじゃん。

Aちゃん、スケートが一番大事って言ってたじゃん。

昌磨にだってきっと同じ感情だよ。

会いたいのは、友達として。
俺が変に勘違いしそうになっただけだ。

そう頭で理解しようとしても、心の中には黒い感情が沸き起こりそうで、必死でそれを抑えようと大きく息を吐く。

ギュッと目を瞑って気持ちを落ち着けていると、｢ゆづくん！｣と俺を呼ぶAちゃんの声。