氷上で煌めく太陽８ (ページ32)

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３７５話ページ32

｢そういや、お兄ちゃんは？｣

面倒くさいお父さんは放っといて、お母さんに話を振る。
お兄ちゃんの大学の準備で東京に来てたはずなのに、そのお兄ちゃんがいない。

母｢伊吹は『さいたまより東京のほうが楽しいから俺はパス』って言って、一人で東京で遊んでるよ｣

お兄ちゃん、それは全さいたま市民を敵に回す発言だよ……。
あ、伊吹ってのはお兄ちゃんの名前ね。

母｢まあ、Aに会うのが照れくさいってのもあるみたいだけど｣

｢はあ！？なんで！？てか、お兄ちゃんに照れるという感情あったの！？｣

結弦｢Aちゃん、それ言い過ぎ(笑)｣

母｢あー、いいのいいの。伊吹、ツンデレだから(笑)Aが構うとツンツンしてるクセに、Aがオリンピックで金メダル獲った瞬間は誰よりも号泣してたから(笑)｣

｢嘘！？信じらんない……｣

母｢ほんとほんと。Aが出演するテレビ番組も全部録画して保存してるからね(笑)照れくさいのも、自分の妹が金メダリストっていう大きな肩書きを持って、Aの凄さを認めたからじゃない？｣

あの、いつも私には｢バーカ｣とか｢俺より頭悪いのに｣とか最低なことしか言ってこなかったお兄ちゃんが。
そんなふうに思ってたなんて。

｢意外すぎて引く……｣

姉｢伊吹、なにげにAのこと好きだからね。お父さんと同じで、好きすぎて面倒くさいタイプ？｣

結弦｢Aちゃんはみんなから愛されてるんですね｣

母｢そうなのよ。同世代からは結構近寄りがたいって思われがちなんだけど、打ち解けてからは早いの。結弦くんだって、Aのこと可愛がってくれてるんでしょ？たまにAから話聞くけど、いい話しか聞こえてこないもの｣

結弦｢本当ですか？そう言ってもらえると嬉しいです。僕も、Aちゃんは妹みたいに思ってるので｣

姉｢えー、そこは女としてじゃないの？妹なの？羽生くんがAの彼氏になってくれたら超嬉しいんだけど｣

｢ちょっとお姉ちゃん！｣

私達の間で今そういう話はタブーなんだよ！

一気に変な汗が出る。

ソチでのことを話せたら簡単なんだけど、そんなこと出来るわけないし。

結弦｢僕は現役の間はスケートでいっぱいいっぱいなんで、今はそういうのは考えられないです｣

なんだ、残念。なんていうお姉ちゃんを見て私とゆづくんは顔を見合わせて苦笑い。