氷上で煌めく太陽８ (ページ22)

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３６５話《世界選手権2014　バンケット》ページ22

リンクの上にいるときとは違って、スーツやパーティドレスなんかに身を包んだ選手たち。

エキシビションが終わって、バンケットでみんな楽しそうに思い思いの時間を過ごしてるところ。

真央ちゃんやゆづくんの人気はさすがだなあ。
２人の周りには、絶えず人が集まってる。

ユーリャもツンツンしてるけど、それなりに人付き合いはちゃんとするんだね。

みんなからちょっと離れたところから人間観察をしていると、ハン・ヤンが手を振りながら近づいてきた。

ハン｢A、どう？楽しんでる？｣

｢んー。まあまあ、かな｣

壁により掛かる私の隣に、ハン・ヤンも同じように背中を預ける。

ハン｢どうしたの？浮かない顔してるけど。何か悩みごと？｣

｢んー……悩みっていうか。うーん……｣

ハン｢僕で良ければ話聞くけど｣

そう優しく微笑むハン・ヤン。

ハン・ヤンなら、冷やかしとかナシで真剣に話を聞いてくれるだろう。
そう思って、すがる気持ちで話を切り出した。

｢ハン・ヤンは……恋人、いる？｣

ハン｢恋人？いないよ｣

｢好きな人は？｣

ハン｢今はいないなぁ。Aみたいに可愛い子が現れてくれたら嬉しいんだけどね。何？Aは恋の悩み？｣

｢恋というか……人を好きになるってどういうことなのかな？って思って。仲間や友達への好きと、恋愛の好きの違いってどういうところなのかな？｣

ハン｢A、もしかして恋愛経験ないの？｣

｢あったらこんなこと聞かないよ……｣

やっぱ聞くのは間違いだったかな、と恥ずかしさで逃げたくなる。
そう思う私の横で、彼は顎に手をかけて真剣に考えている。

ハン｢僕が思う恋愛の『好き』はね、献身と独占欲、かな｣

｢どういうこと？｣

ハン｢見返りなんて気にしないで、その人のために尽くしたいという気持ちと、僕だけを見て欲しい、頭の中を僕だけでいっぱいにして欲しい！っていう気持ちがその人に向けられてるなら、もう恋してるんだなって思うよ｣

献身と、独占欲……。

『Aちゃんの力になりたい』
『俺だけを見てほしい』

ソチでそう言っていたゆづくん。

私は……。

見返りは求めないけど、ゆづくんが私にしてくれてるのと同じ熱量で尽くそうと思ったことは無いし、私だけを見てほしいと願ったことも無い。

やっぱり、ゆづくんやハン・ヤンが言うような恋愛の『好き』とは違うような気がする。

ユーリャは、私のゆづくんを見る目が……なんて言ってたけど、きっと気のせいだよ。