氷上で煌めく太陽８ (ページ20)

今日:7 hit、昨日:4 hit、合計:134,677 hit

３６３話【結弦side】ページ20

リンクサイドで出番を待つAちゃん。

手にはゴールドのきれいな丸い形をしたポンポンを持って、リンクで演技をする選手を見ている。

Aちゃんの演技、どんなのだろ。楽しみだな。

前の選手の演技が終わって、Aちゃんがリンクに出ていく。

チアガール姿のAちゃん。競技のときにはあまり見せることがない演技前のにこやかな笑顔に、会場からは｢かわいい！｣と歓声があがる。

これはAちゃんのファンが増えるなー。

リンクの真ん中で、片手を天に突き上げるように高くあげてポーズを取る。

曲はペット・ショップ・ボーイズの『GO WEST』

イントロが始まると同時に、ピボットターン。

リズムに乗って、フォアでリンクを大きく周回。

ステップをうまく組み合わせて、縦横無尽にリンクを滑る。
ジュニアときのプログラムだからか、レベルとしてはそんなに高い技はないけれど、正確に決めてくるあたりはさすがだなって思う。

サビの部分では、曲に合わせて手を叩いて観客を煽っている。

そして散々煽った後にジャンプの体勢。

２年前、Aちゃんはこの曲でどんなジャンプを跳ぶつもりだった？

気になってじっと彼女を見つめる。

ガッと音を立てて踏み切ったそのジャンプは、

結弦｢４回転トゥループ……｣

さらにコンビネーションじゃないけど、すぐにもう一つジャンプの体勢になって軽々とトリプルアクセルを跳んでみせた。

結弦｢すっげ……｣

え、Aちゃん、これを１４歳でやるつもりだったの？

めちゃくちゃ楽しそうに滑ってるAちゃん。

エキシビションとは思えないくらいの構成に、会場からは大歓声が起こっている。

フィニッシュポーズと同時に、会場はスタンディングオベーション。
大盛りあがりの中、Aちゃんは満足そうな顔でリンクから戻ってきた。

すれ違う選手たちとハイタッチやハグをして、汗を拭きながらこっちに歩いてくる。

｢あー、ゆづくん見てくれたー？｣

結弦｢見た見た。めっちゃ楽しかった。Aちゃん、すごく可愛かったよ｣

｢本当？ありがとう！私も楽しかった！今日この曲をやれてよかったよ｣

はじけるような笑顔をみせたAちゃんは、またあとでね！とバックヤードに消えていった。

さて。
俺もAちゃんに負けてられないな。

最高の演技で、お客さんを楽しませよう。