氷上で煌めく太陽８ (ページ15)

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３５８話ページ15

結弦｢Aちゃんおかえり｣

｢ただいま。ゆづくんめちゃくちゃ不審者だよ(笑)｣

結弦｢失礼だな―(笑)Aちゃんが帰ってくるの待ってたのに｣

笑いながら部屋から出てきたゆづくんは、もう寝るだけだったのか、ジャージよりもラフな格好をしてる。

｢わざわざ待ってたの？いつ帰ってくるかわかんないのに｣

結弦｢だって、直接おめでとうって言いたかったから。あ、ハビはもう寝るって言って部屋に戻っていったけど｣

｢あはは(笑)ハビらしいね｣

結弦｢試合、お疲れさま。銅メダルおめでとう。ショートからの巻き返し素晴らしかった｣

｢ありがとう。ゆづくんとハビがたくさん励まして応援してくれたおかげだよ。……私ね、昔から自分はメンタルが強い人間だと思ってたの。だけどシニアの世界で戦うようになってから、あれ？私って全然強くない？逆にすぐにへこたれて弱いじゃんって思って｣

ジュニアの時は日本では敵なしって感じで、世界でも表彰台は常連って言われてて。
｢加賀美Aが出る試合は彼女の独壇場だ｣なんて言われたこともあった。

だから、私はどんな状況でも強い選手なんだ、って勘違いしてたんだな、きっと。

｢最初は弱い自分を見せるなんて恥ずかしくて無理！って思ってたんだけど……それじゃどんどん深みに嵌まっていくけだって気づいたの。手を差し伸べてくれる人がいるなら、変なプライド捨ててその手を掴んでみようって思ったんだ｣

結弦｢Aちゃんの歳でそれに気づけたって、凄いことだと思うよ｣

｢それはクリケットのみんなのおかげだよ｣

ありがとう、というと、ゆづくんは嬉しそうに笑ってくれた。

結弦｢それ、ハビが聞いたら泣いて喜ぶよ、きっと(笑)｣

｢明日、ハビにもお礼言っておくね｣

結弦｢そういやハビ、『僕、明日のエキシビションはAと一緒に滑れるんだね！』ってめちゃくちゃ喜んでたよ｣

｢本当？そう言われれば、ハビとエキシビションやるの初めてかも｣

結弦｢ハビから言われたよ。『ユヅルばっかりAとペアでずるい』って｣

確かに、今シーズンはグランプリファイナル、全日本、オリンピックと、続けてゆづくんとエキシビションナンバーのペアを組んでいる。

ハビ、私には何も言ってなかったけど、ゆづくんにそんな事言ってたんだ(笑)

｢じゃあ、明日はハビといっぱい楽しむことにする！｣

結弦｢そうしてあげて(笑)｣

今シーズン最後の大会、ハビとなら楽しいエキシビションになりそう。