３４４話 ページ1
ブライアン｢綺麗な桜だね！A！｣
結弦｢ブライアン、子供みたいに喜んでるね(笑)｣
｢ブライアンの笑顔は、見てるとホッとするよね……｣
私は今、ゆづくんとブライアンと、トレーシーの４人でホテルの裏庭で桜を眺めてる。
ブライアンのテンションの高さとは裏腹に、私の気分は沈んだまま。
｢ねえ、リンクに行かなくていいの？本番まであと３日しかないよ？｣
ブライアンにコンディションに不安があると相談をすると、リンクではなく桜を見に行こうと連れてこられた。
本番直前にこんな呑気にしていていいのかと問うと、ブライアンはさらにニコニコして私の肩を掴む。
ブライアン｢A、休養もトレーニングの一つだよ？毎日追い込んでばかりじゃ、コンディションが整わなくなるのも当然だ｣
ブライアンの言葉に、トレーシーも頷く。
トレーシー｢そうよ。Aはソチからずっと頑張り続けたんだもの。１日休養を入れたっていいのよ。神様は許してくれる｣
ブライアン｢本番まで『３日もある』からね｣
そう言ってウインクをするブライアン。
結弦｢考え方次第ってことだよね｣
｢どういうこと？｣
結弦｢あと『３日しかない』と捉えるか、まだ『３日もある』と捉えるか。同じ３日間でも、考え方と時間の使い方次第で未来は変わるってこと｣
｢考え方と時間の使い方次第……それが、お花見なの？｣
結弦｢そうなんじゃない？いいじゃん。桜キレイだし。今日は温かいから外も気持ちよくて気分転換になるよ｣
うーん、と背伸びをして空を仰ぐゆづくん。
確かに、お天気が良くてポカポカしていて、周りは静かだし癒やしの雰囲気はある。
｢でも、ゆづくんまで付きうことないのに。リンクに乗らないと不安じゃない？｣
結弦｢あ、大丈夫。後でブライアンと行ってくるから。その間、Aちゃんはトレーシーと女子会でもしてて｣
｢……それならいいけど｣
結弦｢まじで俺の練習とか気にしなくていいから。Aちゃんはコンディションを少しでも回復させることに集中して｣
｢うん……なんか、ごめんね｣
結弦｢え、なんか謝る要素あった？｣
｢なんとなく……｣
結弦｢無くない？無いよね？むしろありがとうって言ってくれたほうが、この後の練習頑張れるんだけど｣
｢じゃあ……ありがとう｣
どういたしまして。
そう言って目を細めて笑うゆづくんの顔が眩しく見えたのは、太陽の光のせいかな？
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作者名：優里奈 | 作成日時：2021年7月18日 15時
