8話 ページ8
柳田さんは本当に5分で戻ってきた。
しかも、着替えのほかにもお店の予約まで済ませたっていうからびっくり。
「柳田さんって、ボーッとしてそうに見えて結構やり手なんですね」
柳田「なんですか(笑)やり手って」
「どうやったら着替えとお店の予約を5分で済ませられるんだろう?って思って」
柳田「そんなこと?簡単ですよ。脱いだスクラブは専用の回収ボックスにぶっ込んで、中に着てたのはカバンにつっこめばいいし。お店は酒が飲みたかったのでいつも行く居酒屋予約しただけですしね」
「え、まってまって。情報量多すぎです。脱いだ服は、畳んでしまってます?」
柳田「え?畳んでないですけど」
「たたみましょうよ!シワくちゃじゃないですか!」
柳田「だって、どうせ洗濯するんだからいいでしょ」
洗濯したあともシワシワだしねー、と飄々と言い切る柳田さんに、呆れて物が言えない。
「まあ、柳田さんが大雑把な人だっていうのは、4ヶ月一緒にリハビリしてきてなんとなく気づいてましたけど」
結構、そのへんに筆記用具とか手帳とかポンポン置いてあとから探してたり。
ピタピタしたゴム手袋が外れなくて、破るように乱暴に脱ぎ捨ててたり。
なんなら、履いてた靴下が左右明らかに違うでしょ、って日もありました。
柳田「加賀美さんだって似たようなもんじゃないですか。その辺にタオル置きっぱなしだったり、リハビリに使ったアイテムの片付け方がブルドーザーみたいだったり」
「ブルドーザーってなんですか」
柳田「細々したものを、両手で押すようにザーッと端っこによせてたじゃないですか」
「あれは柳田さんが急かすから、」
柳田「はいはい。人のせいにしないでください」
「くっそ……」
柳田「ところで。もう出発しても大丈夫ですか?」
「え?あ、はい。どこ連れてってくれるんですか?」
柳田「ここからわりと近くにある居酒屋なんですけど、料理が美味しい上にレパートリーが豊富で。お酒を飲まない人でも楽しめるので。加賀美さん、お酒飲まないでしょ?」
一応、現役アスリートだしね。と気を使ってくれるあたりは年の功なのかな。一応、ってのが引っかかるけど。
「少しくらいなら付き合いますよ。本格的な練習は明日からなんで」
柳田「本当ですか?嬉しいなあ。一人だけ飲んでるのはつまらないと思ってたんですよ」
じゃあ行きましょうか、と笑顔で言う柳田さんの隣を歩く。
今まで気づかなかったけど、柳田さん、背が高いな。
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作者名:優里奈 | 作成日時:2023年10月28日 9時