６話【結弦side】 ページ6
昌磨｢ゆづくん、なんか機嫌いい？｣
結弦｢え、そうかな？そう見える？｣
ホテルの部屋に戻る途中。
昌磨が俺の顔を覗き込みながらそんなことを聞いてきた。
昌磨｢んー。なんか、こう……ふわふわしてる感じっていうか｣
結弦｢ふわふわ、ねぇ……。まあ、機嫌が悪いわけじゃないよ｣
それを機嫌いいっていうんじゃないの？なんて昌磨は言ってるけど。
そう言われるとそうなのかもしんない。自分でもよくわかんないや。
さっき見たAからの返信。
《おめでとう。試合見てたよ。すごく、頑張ったんだね。感動しちゃった》
短い文章だけど、ちゃんと見ててくれたんだって思って嬉しかった。
それだけのやり取りだったけど、Aとのつながりが完全に途切れていないことに少し安堵したりして。
いや、俺がメール送ったから律儀に返してくれただけかもしんないけど。
スルーされるより遥かにマシ。
昌磨｢ゆづくんさ……Aちゃんとなんかあった？｣
結弦｢……は？なんで？｣
昌磨｢いや、なんとなく。会えば必ずと言っていいほどAちゃんの話してたのに、平昌では聞いてないなーって思って。それに会見での受け答えもさ。｣
Aちゃんが日本に帰った、とか。
年明けから連絡取り合ってない、とか。
いくら離れてても、オリンピックを控え大事な時期でも、恋人どうしでそこまでする？
まっすぐ俺の目を見て聞いてくる昌磨。
ビビった。
昌磨、やっぱり侮れないやつだわ。
ぼーっとしてるようで、結構勘は鋭いからな。
それでいて、ごまかせないのが厄介なところ。
昌磨はもう、うすうす感づいてるんだろうな。
結弦｢なんかは……あったよ。うん。あった。たぶん、昌磨が想像してるとおり｣
そう言うと昌磨は息を呑んだ。
信じられない、といった感じでじっと俺を見ている。
昌磨｢どうして？あんなにお互いに好きで大事に想い合ってる２人なのに｣
結弦｢好きって気持ちだけじゃ、どうにもできないこともあるんだよ｣
どうにかしたくても、俺たちだけではどうにも出来ないことが。
昌磨｢そっかぁ｣
結弦｢昌磨も。大切な人の守り方は間違えないようにな｣
昌磨｢なんか、すっごく重い言葉｣
結弦｢そんだけ大事なことなの｣
肝に銘じておきます、と昌磨が小さく頷く。
俺が恋愛のアドバイスとか、すごく変な感じだけど。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 286人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：優里奈 | 作成日時：2023年10月28日 9時
