氷上で煌めく太陽２２

１０３７話 ページ9

アラームをセットして、いつもより少し早く起きた。

今、モントリオールは11月10日のもうすぐ朝５時になるところ。

NHK杯の結果が気になって、男子ショートが始まる少し前に起きた。
日本は同じく10日の夜7時くらい。

きっとテレビでも大々的に生中継とかしてるんだろうな、なんてのんきに考えながら、スマホで先に行われたペアショートと女子ショートの結果を確認する。



つもりだったんだけど……



｢……え！うそっ！｣


目に飛び込んできたのは、ニュースアプリが知らせる速報の一文。



『羽生結弦、NHK杯を棄権。前日練習で靭帯損傷。平昌出場に暗雲』



心臓がドクンと大きく脈を打つ。スマホを持つ手も震えてるのが分かった。


ゆづくんが、ケガ……？！


｢うそでしょ……｣


震える手でそのニュースの詳細を確かめてみる。



『前日の公式練習で4回転ルッツを跳んだ際に右足首を負傷した模様。午後の公式練習には姿を現さず、本番当日の今日午後に棄権が発表された』



｢４回転ルッツ……｣


昨日、メールのやり取りで話題にあげてたルッツが原因だなんて。



｢ゆづくん……っ｣


やだ。
なんで私が泣きそうになってんの。


泣きたいのはゆづくんだってば。


ソチで金メダルを獲ったあとも気を緩めることなんて一切無くて、自分に厳しく、常に上を目指して頑張ってきたのに。

ずっとずっと、オリンピック２連覇を実現させるんだって、そう言ってここまでやってきたのに。


なんで今なの……。



ゆづくんのケガと大会棄権の一報に動揺しすぎて、他の選手の結果を確かめる余裕も無くなってしまった。

ただ力無くベッドに寝転んで、ボーッと天井を見つめる。


｢靭帯損傷……｣


損傷ってことは、断裂した私よりは軽いって考えていいのかな？
いや、棄権しなきゃいけないほどのケガなんだからそんなことないか。


でも平昌まであと３ヶ月。

その前には選考会を兼ねた全日本もある。
全日本に出られなかったら、オリンピックの代表にも選ばれることは無い……？

えっと、オリンピック代表の選考基準ってどんなだったっけ……。
あー！分かんない！４年前の私、ちゃんと覚えとけよ！

なんて１人でパニックになりながら、ネットで代表の選考基準を調べてみる。

だけど冷静じゃない今の頭で理解しようってほうが無理で。
早々に諦めてパソコンを閉じた。


｢大丈夫……ゆづくんならきっと、代表に選ばれるよ……｣


そう祈るしか無かった。

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