1054話 ページ27
結弦「Aの言いたいことは分かる。頭では理解してるけど、心が追いつかない」
「ごめんね。そこは、ゆづくんに耐えてもらうしかないよ」
結弦「そうなんだけど!……寂しいよ。こんなさよならのしかたなんて。Aは寂しくないの?」
「寂しいけどこうするしかなかったんだよ!……私だって、嫌いになってこんな話してるんじゃないんだから……っ」
少し取り乱したゆづくんの口調に、釣られるように私も語気を強めてしまう。
それと同時に、胸の奥にしまっておこうと思っていた思いが溢れ出す。
「ゆづくんのことは好きだよ。スケーターとしても、……一人の男性としても。ずっと一緒にいられたら……ゆづくんの隣にいられたら幸せなのにな、って何回も思ったよ」
ゆづくんのことはこの先ずっと、嫌いになる日なんて来ないと思う。
それくらい好きなんだよ。
「私だってこんなさよならしたくなかった。でも今の関係性でそばにいたって辛いだけだって分かった。ゆづくんを見ると、二人で作ってきた幸せな時間を思い出して……でももうこんな時は訪れないんだなって苦しくなる。……だったらもう、見えないところに行っちゃおうって。簡単には会えないくらい離れたらいいんだって」
結弦「むちゃくちゃだよ、そんなの。考えがぶっ飛びすぎ」
「うん。自分でもそう思うけど、……もう決めたから」
ごめん。
ゆづくんに向かって頭を下げると、はぁ〜、と長いため息が聞こえる。
勝手でごめん。
「ゆづくん。私のこと嫌いになってもいいんだよ?勝手で、ワガママで、むちゃくちゃなやつだって」
むしろそう思ってくれたほうがいいかもしれない。
結弦「そうなれたら楽なんだろうけどな……。できるわけねーじゃん。俺だってAのこと好きだよ。スケーターとしても、加賀美Aっていう一人の女性としても」
「……」
結弦「Aが今も俺のことを好きで居てくれてるっていうのは嬉しかった。それ聞いたらなんかもう、いいかな?って。いつまでも過去の関係にしがみついてちゃダメだって思えた」
「ありがとう。分かってくれて」
結弦「まー。100%受け入れられたわけじゃねーけど。そうするしかないって覚悟決まったわ」
曇りがちだったゆづくんの表情がスッキリしてる。
これで本当に、私たちの関係にケリがつくんだ。
結弦「A。頑張れよ」
「ゆづくんも」
いつかまた、どこかで。
ー Fin ー
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優里奈(プロフ) - エミルさん» エミルさん、ありがとうございます(*^^*)さっぱりしすぎたかなーと思ったんですが、あんまり深堀りしていくとお話の流れがめちゃくちゃになっちゃいそうな気がしたのでスパッと完結させました(^^)続編の期待、嬉しいです♪近いうちに、書き始めようかと思ってます(^q^) (10月2日 22時) (レス) id: 59b863f10c (このIDを非表示/違反報告)
エミル(プロフ) - 優里奈さん、完結おめでとうございます!え、ここで!?と思った一人です(笑)最後はちょっと切ないですね。でも、続編あるかも……ということで期待しています! 優里奈さんの描く羽生さんとヒロインちゃんは可愛かったので、また会えると嬉しいな。 (10月2日 21時) (レス) @page28 id: 68edaa3183 (このIDを非表示/違反報告)
優里奈(プロフ) - りいなさん、コメントありがとうございます!驚きましたよね〜( °_° )でも羽生くんの人生が幸せで溢れてくれるならそれでいいです(*^^*)お話は亀更新だけど書きたいことはずっと前から決まってるので、それを書くまでは続けます♪楽しみにしてくれて嬉しいです(*´`) (8月5日 23時) (レス) id: 59b863f10c (このIDを非表示/違反報告)
りいな - いつも楽しく読ませて頂いています!羽生くんの結婚を聞いて私も作者さんみたいに驚いてしまいましたけど、やっぱり本人の幸せが1番ですよね。これからの活躍にも期待大です。この作品も継続されるという事で嬉しい限りです!これからも更新楽しみに待っています! (8月5日 22時) (レス) @page18 id: 91595a05fb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:優里奈 | 作成日時:2023年6月12日 12時