氷上で煌めく太陽２２

１０４６話 ページ19

クリケットに行って、ブライアンたちに私の気持ちを話した。


いつもより早めに、日本に帰国する予定なこと。
年明けはそのまま日本でリハビリを続けたいこと。


そして。


復帰後はクリケットをやめて、拠点を日本に移したいこと。


ブライアンには引き留められたけど、私の意思の強さに根負けしたのか最後は理解してくれた。

クリケットにはたくさんお世話になったしいろんなことを学んだけど、いま私はここにいちゃいけないと思う。


すべては、ゆづくんにスケートに集中してもらうため。
自惚れって言われるかもしれないけど、私がいたらゆづくんは余計なことを考えてしまうと思う。
私のケガの具合を気にしたり、なにかと気を遣って世話してくれたり。

私のことより、今は自分のことだけに時間と労力を使ってほしい。

もともとスケートに集中するために、って別れたのに、これじゃ意味がない。


私のことは頭の隅に追いやって、なんなら完全に忘れてくれてもいいから自分のスケートのことだけ考えてほしい。


そのためには、私はここから離れたほうがいい。
ちょうどリハビリも次の段階に移る時期だし、このタイミングで日本に戻るのが得策だと思ったんだ。



｢4年かあ……。あっという間だったな｣


トロントに来たときはどうなるかと思ったけど、いろんなことがあったな。

オリンピック開幕まで1年を切ったところで拠点を変えるなんて、無謀だって言われたときもあった。

こんな16歳の小娘に金メダルなんて無理だろ、って鼻で笑ってる大人もいた。
ファンの間では、羽生結弦に近づきたくてクリケットに入ったんだろ、って言われたり、どんだけ金つんだ？って言われたこともあった。


ほかにもいろんなこと言われたり書かれたりしたけど、オリンピックで金メダル獲ったしグランプリシリーズやファイナルでも金メダルを獲った。

連覇もしたし、みんなを見返すくらいの結果を残してきた。


すべて、なにものにも代えがたい経験と思い出ばかり。


だけどこれからは、気持ちを切り替えてやっていくって決めたんだ。

いつまでも過去の栄光や思い出に浸っていたら前に進めない。


今、人生の決断が必要なときなんだ。

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