1045話【結弦side】 ページ17
何歳になっても誕生日ってちょっと特別な感じがするけれど、今年はあまり意識したくないかも。
いつもだったらグランプリファイナルの期間と重なっていて、世界のどこかで金メダル目指して戦ってた。
でも今年は違う。
足首をガチガチに固定して松葉杖をつきながら歩く自分の姿は、見ればみるほど情けなく見える。
ーーこんなはずじゃなかったーー
何度そう思ったことか。
自分の中でのプランは、ロステレとNHK杯を経てグランプリファイナルに進出して5連覇。
その流れにのって全日本も優勝して、一発でオリンピックの出場を決めるはずだった。
それが現実には連覇は途絶えて全日本出場も危うい。きっとこの状態じゃ、全日本も欠場することになる。
結弦「はぁ……」
今日の診察では、骨と腱の炎症が治まってなくてまだ安静が必要って言われた。
どうしたらいいのか。
どうするのが一番いいのか。
考えようとしてるのに、頭の中がぐちゃぐちゃで何も考えられない。
今までケガを負った時は、わりと早い段階で気持ちを切り替えられたんだけどな。
今回は完全に切り替えるにはまだ時間が必要みたいだ。
そんなことを思いながらボーッと天井を見つめる。
するとベッドに放っていたスマホが着信を知らせた。
結弦「あ、Aから電話だ……」
なんだろ、と思いながら通話をタップする。
電話越しに聞こえるのは、ザワザワとした賑やかな音。クラクションが聞こえるから外にいるのかな?
《……もしもしゆづくん?》
結弦「ん。どした?」
たった一言なのに、Aの声を聞いた瞬間に少しだけ気分が上向きになる。
《いやー……どうしてるかなって思って》
結弦「どうって……家でおとなしくしてるけど」
《そっか……だよね》
結弦「Aは?いま外?」
《うん。用事が済んだからちょっと電話してみたの。今日、誕生日でしょ?おめでとうって言いたくて》
結弦「そっか……ありがと」
《ゆづくん、あのさ……》
結弦「うん?」
そう言ったきり、Aは黙ってしまった。
なんだろ。なんか言いたいことあるんじゃないのかな。
結弦「A?」
《あー……ごめん。言おうと思ってたことあったんだけど忘れちゃった!》
もう行くから切るね!と一方的に電話は切れた。
なんか、誤魔化してるように感じたけど気のせい?
何か言おうとしてやめたんじゃないのかな。
結弦「こんど会ったら聞いてみよ」
そう思いながらスマホをベッドに放った。
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優里奈(プロフ) - エミルさん» エミルさん、ありがとうございます(*^^*)さっぱりしすぎたかなーと思ったんですが、あんまり深堀りしていくとお話の流れがめちゃくちゃになっちゃいそうな気がしたのでスパッと完結させました(^^)続編の期待、嬉しいです♪近いうちに、書き始めようかと思ってます(^q^) (10月2日 22時) (レス) id: 59b863f10c (このIDを非表示/違反報告)
エミル(プロフ) - 優里奈さん、完結おめでとうございます!え、ここで!?と思った一人です(笑)最後はちょっと切ないですね。でも、続編あるかも……ということで期待しています! 優里奈さんの描く羽生さんとヒロインちゃんは可愛かったので、また会えると嬉しいな。 (10月2日 21時) (レス) @page28 id: 68edaa3183 (このIDを非表示/違反報告)
優里奈(プロフ) - りいなさん、コメントありがとうございます!驚きましたよね〜( °_° )でも羽生くんの人生が幸せで溢れてくれるならそれでいいです(*^^*)お話は亀更新だけど書きたいことはずっと前から決まってるので、それを書くまでは続けます♪楽しみにしてくれて嬉しいです(*´`) (8月5日 23時) (レス) id: 59b863f10c (このIDを非表示/違反報告)
りいな - いつも楽しく読ませて頂いています!羽生くんの結婚を聞いて私も作者さんみたいに驚いてしまいましたけど、やっぱり本人の幸せが1番ですよね。これからの活躍にも期待大です。この作品も継続されるという事で嬉しい限りです!これからも更新楽しみに待っています! (8月5日 22時) (レス) @page18 id: 91595a05fb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:優里奈 | 作成日時:2023年6月12日 12時