1044話 ページ16
手術後、モントリオールからトロントに戻ってきて、ひたすらリハビリをする毎日。
12月に入って、自力歩行が少しずつ出来るようになってきた。
とはいえまだまだ松葉杖のお世話になる日々だけど、前向きな変化が出てきたのは嬉しい。
「あ、12月7日……」
カレンダーを見て、思わずつぶやく。
今日は、ゆづくんの23歳の誕生日。
本当なら、日本で開催されているグランプリファイナルに出ていたであろう日。
今どんな気持ちでいるかな。
おめでとうって言っても、ゆづくんは心から喜んでくれるかな。
姉「A。そろそろクリケットに向かうよ」
「あっ。はーい」
お姉ちゃんに声をかけられて我に返る。
今日は久しぶりにクリケットに顔を出す日だ。
でも遊びに行くわけじゃない。
姉「ねえ、本当にいいの?後悔しない?」
「しないよ?クリケットはスケートをするには最高の環境だけど、ここじゃなくてもスケートは出来るし。それに結婚を控えたお姉ちゃんをいつまでもこっちに引き留めておくわけにいかないもん」
姉「私のことはいいのに」
「そうは言っても、向こうは気が変わっちゃうかもしれないじゃん。私のせいで結婚が破談とか嫌だし」
姉「人の心配するとか、100年早いっつうの。でもありがとう。Aは優しいね」
「大事な家族ですから」
そう言うと、お姉ちゃんは照れくさそうだったけど嬉しそうに笑った。
お母さんが亡くなってからは、お姉ちゃんにお世話になりっぱなしだったから。
もうそろそろ、お姉ちゃんも私から解放されて自由に好きなことしてほしい。
姉「伊吹のこともそれくらい考えてあげればいいのに」
「お兄ちゃんはいいの。勝手にしてってかんじ」
姉「就職先、仙台の建築事務所って言ってたよ」
「えー、なんで仙台なの」
姉「関東は競争率高かったから、実家に近い北海道と東北で片っ端からあたったら仙台で内定もらったんだって」
「なにしてんだよ仙台の建築事務所……」
お兄ちゃんなんか雇ったら後悔するぞ、なんて思ってると、お姉ちゃんが私の顔を覗き込んできた。
姉「あら。なんでAがそんなに仙台を気にするの?なんか関係あったっけ?」
「え……」
そう言われて、何も言えなかった。
お姉ちゃんの言う通り、お兄ちゃんが仙台に行こうが私にはなんの関係も無い。
仙台は何度かゆづくんと過ごしたことがあるだけ。
一緒にアイリンで練習したり、年越しをしたり。
ただ、それだけ。
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優里奈(プロフ) - エミルさん» エミルさん、ありがとうございます(*^^*)さっぱりしすぎたかなーと思ったんですが、あんまり深堀りしていくとお話の流れがめちゃくちゃになっちゃいそうな気がしたのでスパッと完結させました(^^)続編の期待、嬉しいです♪近いうちに、書き始めようかと思ってます(^q^) (10月2日 22時) (レス) id: 59b863f10c (このIDを非表示/違反報告)
エミル(プロフ) - 優里奈さん、完結おめでとうございます!え、ここで!?と思った一人です(笑)最後はちょっと切ないですね。でも、続編あるかも……ということで期待しています! 優里奈さんの描く羽生さんとヒロインちゃんは可愛かったので、また会えると嬉しいな。 (10月2日 21時) (レス) @page28 id: 68edaa3183 (このIDを非表示/違反報告)
優里奈(プロフ) - りいなさん、コメントありがとうございます!驚きましたよね〜( °_° )でも羽生くんの人生が幸せで溢れてくれるならそれでいいです(*^^*)お話は亀更新だけど書きたいことはずっと前から決まってるので、それを書くまでは続けます♪楽しみにしてくれて嬉しいです(*´`) (8月5日 23時) (レス) id: 59b863f10c (このIDを非表示/違反報告)
りいな - いつも楽しく読ませて頂いています!羽生くんの結婚を聞いて私も作者さんみたいに驚いてしまいましたけど、やっぱり本人の幸せが1番ですよね。これからの活躍にも期待大です。この作品も継続されるという事で嬉しい限りです!これからも更新楽しみに待っています! (8月5日 22時) (レス) @page18 id: 91595a05fb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:優里奈 | 作成日時:2023年6月12日 12時