1042話 ページ14
別れてから4ヶ月。
そんな長い間、お母さんに言えないでいたの?
「珍しいね。ゆづくん、こういう曖昧な状況って嫌いそうなのに」
結弦「確かにそうなんだけど。始めの頃は正直自分の気持ちの整理がつかなくて。うまく言える自信なくて、ちょっとその話題を避けてたとこもある」
「へぇ……」
なんだろう。
今のゆづくんがすごく弱々しく見える。
堂々としていて、自分の判断や行動に自信と誇りを持っていて、やる気に満ちたゆづくんとは正反対。
生気が無くて、自信も誇りも失ってしまったような。儚くて小さくて……壊れてしまいそう。
「でもそれって、余計にゆづくんを苦しめてたんじゃない?」
結弦「え?」
「だってそうでしょ?ゆづくんのことを信じて支え続けてくれているお母さんに、嘘をついているんだもん」
私がそう言うと、ゆづくんはきゅっと下唇を噛んだ。
なにか言葉を探しているのか、しばらく黙ったまま。
「ゆづくんの気持ちに整理がついてるなら、私は言ってもらっても構わないから。お互いがスケートに打ち込むために別れたのに、それが心に引っかかったままなんて別れた意味無いし」
ケガをして気持ちが落ち込んでるせいでもあるんだろうけど。
大丈夫だよ、って抱きしめたくなる衝動を、拳を強く握ってなんとか抑える。
今そんなことをしたら、それこそ別れてからの4ヶ月が無意味なものになってしまう。
ちょっと冷たいって思われるかもしれないけど、これでいいんだ。
結弦「やっぱ女の人って現実的なんだな」
「そうかな。でも間違ってないと思うけど」
結弦「それを言われると……なんも言えないわ」
「ちょっときつい言い方になっちゃったかもしれないけど、本当に私に気を使ったりとかしないでよ?喧嘩別れしたわけじゃないんだし。恋人同士じゃなくなってもこうして会って話したりはするし」
結弦「ん……分かった」
元気ないのが本当に気になるけど、今は落ちる時なんだと思ってあまり触れないでおこう。
無理して元気に振る舞ってもつらいだけだし。
「そろそろいこっか」
立ち上がろうと松葉杖に手を伸ばすと、その手をゆづくんに掴まれた。
結弦「A。ありがとう」
「……えー?私お礼言われるようなことなにかしたっけ?」
結弦「分からなくてもいいよ。俺が言いたかっただけだから」
「なにそれ(笑)まあいっか。ありがたく受け取っとく」
緊張気味だったゆづくんの顔がやっと自然に綻んだ。
235人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
優里奈(プロフ) - エミルさん» エミルさん、ありがとうございます(*^^*)さっぱりしすぎたかなーと思ったんですが、あんまり深堀りしていくとお話の流れがめちゃくちゃになっちゃいそうな気がしたのでスパッと完結させました(^^)続編の期待、嬉しいです♪近いうちに、書き始めようかと思ってます(^q^) (10月2日 22時) (レス) id: 59b863f10c (このIDを非表示/違反報告)
エミル(プロフ) - 優里奈さん、完結おめでとうございます!え、ここで!?と思った一人です(笑)最後はちょっと切ないですね。でも、続編あるかも……ということで期待しています! 優里奈さんの描く羽生さんとヒロインちゃんは可愛かったので、また会えると嬉しいな。 (10月2日 21時) (レス) @page28 id: 68edaa3183 (このIDを非表示/違反報告)
優里奈(プロフ) - りいなさん、コメントありがとうございます!驚きましたよね〜( °_° )でも羽生くんの人生が幸せで溢れてくれるならそれでいいです(*^^*)お話は亀更新だけど書きたいことはずっと前から決まってるので、それを書くまでは続けます♪楽しみにしてくれて嬉しいです(*´`) (8月5日 23時) (レス) id: 59b863f10c (このIDを非表示/違反報告)
りいな - いつも楽しく読ませて頂いています!羽生くんの結婚を聞いて私も作者さんみたいに驚いてしまいましたけど、やっぱり本人の幸せが1番ですよね。これからの活躍にも期待大です。この作品も継続されるという事で嬉しい限りです!これからも更新楽しみに待っています! (8月5日 22時) (レス) @page18 id: 91595a05fb (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:優里奈 | 作成日時:2023年6月12日 12時