氷上で煌めく太陽２２

１０２９話 ページ1

10月20日。
いよいよ手術当日。

朝からなんだか落ち着かない。

それもそのはず。

私より先に、ゆづくんが戦っている最中だから。

ロステレコム杯。
会場となっているモスクワは時差が6時間。
向こうのほうが進んでいるから、いまちょうどゆづくんの出番のあたりだと思う。


｢ねえお父さん。ライスト繋がらないの？｣

父｢うーん。ちょっと厳しいなあ｣

｢さいあく……｣

姉｢A。そんなこと言わないの｣

｢だって……｣


ゆづくんの試合、見たかったのに。
手術前に見れるからって、ちょっと楽しみにしてたのにな。


姉｢結弦くんは試合に集中してるんだから、Aも自分のことに集中しなよ｣

｢集中っていったって……何もやることないもん｣


なんてぼやいてたら。


姉｢A。スカイプきてるよ｣

｢えっ。だれ？｣

姉｢村上佳菜子ちゃんだって｣

｢え！佳菜子ちゃん！？｣


まさかの人の名前にちょっとびっくり。
佳菜子ちゃん、私の手術の日程知らないよね？偶然？


｢はーい。佳菜子ちゃんひさしぶり｣

佳菜子《あー、Aちゃん元気？…って、怪我してんのに元気じゃないか》

｢体はアレだけど気持ちはいつもどおりだから元気だよ｣

佳菜子《そう？今話しても大丈夫？》

｢うん。ゆづくんの試合見ようと思ってたけど、ライスト繋がんなくて暇してたとこ｣

佳菜子《……え？》

｢え、だから、ライストが｣

佳菜子《そうじゃなくて！呼び方！》

｢呼び方……？あっ！｣


そうだ。
別れてから、気持ちを切り替えるためにって呼び捨てから前の｢ゆづくん｣に戻したんだった。
佳菜子ちゃんには別れたことはいってないから、呼び方変わってたら変に思うよね。
気抜いてた……。


佳菜子《なんで呼び方変わってんの？……ゆづとなんかあった？》


えーっと、これはどう説明したら……。
ゆづくんに相談無しで別れたことを言うのは気が引けるし。
前もってどうするか話し合っておけばよかった……。


｢あのー、えっと……｣

佳菜子《なーんてね。ごめんごめん。これから手術なのにね》

｢えっ、佳菜子ちゃん知ってたの？｣

佳菜子《うん。ゆづから聞いたよ。それと、二人が別れたことも》


ゆづくん……！
私は相談してから……とか思ってたのに、1人でさっさと言っちゃってるし！

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