氷上で煌めく太陽１８

８５１話【結弦side】 ページ19

フリーは4回転ジャンプが2本。
Aの今までの演技の中で、過去最高難度の構成だ。


始めの2本の4回転。

いけるか……

曲に合わせて、Aがトゥループの姿勢に入る。


ただでさえ女子では跳べる選手が少ない4回転ジャンプ。

Aはそれを2本も入れた強気なプログラムで挑む。


負けるなよ。

周りの空気にも、自分にも。


そう祈りながら演技を見守る。


結弦｢……っしゃあ！｣


ガッ…という着氷の音を、会場のマイクが拾う。

ちょっと沈んだけど、回りきった。


そして安堵する間もなく、次のジャンプだ。

4回転サルコウ……これが決まれば一気に波に乗れるぞ。


結弦｢頑張れA……！｣


堪らず声が出てしまって、でも言わずにはいられなくて。

今回、直接そばで頑張れって言ってあげられなかったぶん、今できる精一杯の応援をしたかった。


母｢おっ！｣

結弦｢え、…わあ！よっしゃ！｣


やばー！
A、サルコウもおりた！

着氷はちょっと乱れたけどオーバーターンもステップアウトもしてないし、これはファイナルに続いて成功じゃね?!

興奮して、隣にいた母さんと手を取ってサルコウの成功を喜んだ。

これには会場もどよめいて、テレビの実況も興奮気味にAの4回転ジャンプの成功を伝えている。

唯一、解説のしーちゃんだけが冷静だった(笑)

Aもすごくいい表情をしていて、そのあとのエレメンツも順調にこなして、どんどんTESを重ねていった。


これ、ノーミスいけるんじゃねーか？


結弦｢あ(笑)｣


ノーミスを期待してワクワクしながら観ていたら。


最後のレイバックの前に入れていたトリプルループでコケた。

てか、今の回りすぎて着氷のタイミングがズレたか？


母｢ね、今の4回転？｣

結弦｢いーや。3回転だけど回りすぎてタイミングズレたっぽい｣


ふーん。なんて気の無い返事してるけど、これってもしかしたらもしかするかも。


A、4回転ループ出来んじゃね？


いや待て。
俺だってつい最近、ちゃんとプログラムに入れられるようになったんだぞ？

それだってまだ完璧じゃないし。

マジでAが4回転ループ習得したら……


結弦｢怖……っ｣


フィニッシュポーズを決めてリンクサイドに戻るAを見ながら、彼女の可能性の大きさに身震いした。


あとは得点がどう出るか……。


結弦｢やばい。吐きそう｣

母｢なんでゆづがそんななってるの(笑)｣


俺からしてみれば、母さんがそんなに余裕なのが不思議だわ。

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