１６話 ページ16
｢申込み時点での条件ですと、こちらの４件が該当となります｣
それぞれの物件の説明を受けつつ、ほかに要望が無いか、こだわりたい部分は、外せない条件は……など、さらに条件を詰めていく。
Aはパソコンで手際よく条件に見合った物件をピックアップして、二人で画面を見ながら話し合いは進む。
画面を覗き込む時、Aと一気に距離が近くなるんだけど……
A、めっちゃいい匂いする。
肩まで伸びた髪が揺れた瞬間、フワリと香るせっけんの匂い。
思わずドキッとして、Aを見つめてしまった。
｢……どうかしました？｣
結弦｢あ、いや。なんでもない……｣
敬語で話すAに、ハッと現実に引き戻される。
Aは仕事中！
それなのに、匂いに反応する俺は変態か。
気を取り直して、真剣にAの話を聞いて物件を見比べる。
それにしても……
結弦｢東京ってなんでこんなに家賃高いの……｣
見る物件すべて、ホームページで検索したときのようないいお値段だ。
仙台基準で考えるのが間違ってるんだろうけど、それにしてもこんなに違うの……。
｢もう少し条件を落とせばだいぶ変わってくるけど……結弦くんくらいになると、なかなかそうもいかないんだろうね｣
急に砕けた話し方になって、え？仕事モードは？って思ったけど、こっちのほうが話しやすいからありがたい。
それに、ちょっとは１２年分の距離が縮まったのかなって思って嬉しかった。
｢結弦くん、会わない間にすごい人になっちゃって。すっかり有名人だね｣
結弦｢そんなこと……ない、と思う。俺は有名人だなんてあんま思いたくないけど｣
俺はただ、ひたすらスケートをしてきただけ。
人気や知名度は、あとからついてきたオプションみたいなもの。
良いこともたくさんあるけど、そのぶん嫌なことや辛いことも数え切れないくらい経験してきた。
だから応援してくれるのは有り難いけど、有名人っていうくくりにはあまり入りたくない。
｢……12年の間に、私には計り知れないくらい様々な経験をしてきたんだね｣
結弦｢……A、俺の心読めるの？｣
｢どうかな？一応お客様相手の仕事だし、相手の表情から気持ちを察する力は、それなりに持ってるつもりだけど｣
それに……とAはパソコンから手を離して俺を見つめる。
その目は、昔を懐かしむように穏やかで。
｢ずっと、結弦くんのことは応援してきたから。今まで、どんな経験をしてきたかは知ってるつもりだよ｣
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優里奈(プロフ) - 鹿さん» わ！鹿さん！私、鹿さんの作品読んでます！全部読んだけど、今『嘘と真実』読み返してます大好きです！『氷上〜』はどうしても過去を無視出来なくて慎重に書いてるけど、未来のお話なら自由に書けるな〜と思って始めました(^ ^)読んでくださってありがとうございます！ (2022年2月14日 20時) (
レス) id: 59b863f10c (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - はじめまして！かな？大人設定の羽生さんにわくどきしています！引退後のお話なんですね。楽しみにしています。頑張ってください＾＾ (2022年2月14日 15時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：優里奈 | 作成日時：2022年2月12日 23時
