449話 ページ8
スケートなんかやらなきゃよかった
一瞬でゆづくんの顔つきが怖いものに変わった。
私の腕を掴んだゆづくんは、睨みつけるような表情で私を見る。
見たこと無い表情に、背筋が凍るような感覚に襲われる。
結弦「……それ、本気で言ってるの?」
「痛い……、離して」
私の声なんて届いてないのか、腕を掴む手の力は弱まることは無くて。
結弦「本気で言ってるのかって聞いてんだけど」
「……」
怖い。
初めて、ゆづくんが怖いと感じた。
あまりの気迫に、何も言えなかった。
ノブ「ゆづも落ち着いて。相手は女の子やん。Aちゃんも。本当はスケートなんか……なんて思ってないんよね?」
織田さんが私とゆづくんの間に入ると、腕を掴んでいたゆづくんの手がゆっくりと離れていく。
ゆづくんの表情は厳しいまま。静かに私から視線を外して下を向いてしまった。
私もここでやっと冷静になってきて、自分が言った事がどれだけゆづくんを悲しませたか、ここにいるみんなに言っちゃいけないことを言ってしまったことの重大さに気づく。
「あの、……織田さん、そしてみなさんも……ごめんなさい。私、言っちゃいけないことを……私、部屋戻りますね。……頭冷やします。楽しい時間になるはずだったのに……本当にすみませんでした」
涙が出そうになるのを、必死でこらえて頭を下げた。
声が震えてるのが自分でもよく分かる。
泣いちゃダメ。
ここで泣くのはずるい。
頭をあげて、出来る限りの笑顔をみんなに向ける。
みんな、呆気にとられた顔で私を見ていた。
「本当に、すみませんでした……それじゃあ」
くるりと体の向きを変えて立ち去ろうとすると「Aちゃん!」とゆづくんに手を掴まれた。
その瞬間、さっき腕を掴まれたときの感覚を思い出して体がビクッと震える。
結弦「あ、……ごめん。Aちゃん、あのさ」
「ごめん。今はゆづくんと話したくない。顔も見れない」
ゆづくんの手を振り払って部屋を出る。
ハビも追いかけてきたけど、美姫さんを擁護したことが引っかかっていた私は「私なんかより、大切な人のそばにいたら?」と突き放すようなことしか言えなかった。
ハビもそれ以上は追いかけてこなくて、ああ、私、ゆづくんとハビに嫌われたかな……と思いながら自分の部屋に向かった。
我慢していた涙で視界が霞んで、部屋までの道のりがやけに遠く感じる。
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優里奈(プロフ) - エミルさん» 書いててちょっと(ほんのちょっとだけど)辛かったですー(:_;)やっぱり仲良しの二人が好きなので(^^)ここからはどんどん話が進んでいく予定です♪時間が許す時は、どんどんお話書いていきますね! (2021年9月5日 22時) (レス) id: bb1624f74d (このIDを非表示/違反報告)
エミル(プロフ) - 主人公に厳しい展開にハラハラしましたが、羽生くんと仲直りできてよかったです(*´ω`*) 更新楽しみにしていますね。 (2021年9月5日 21時) (レス) id: 68edaa3183 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:優里奈 | 作成日時:2021年9月4日 11時