470話 ページ29
「うそでしょ……」
佳菜子「まじか……」
ハン・ヤンと激突してあんなにふらついてたのに、ゆづくんは再びリンクに戻ってきた。
頭にはガーゼを抑えるためのテーピングがグルグルに巻かれて。
顎にも、目立たないように肌色のテープみたいなのを貼っている。
てっきり、棄権するものだと思ってた。
だって、あんな激しい衝突のあとだよ?
脳震盪とか心配だし、表情だってうつろだったのに。
それでも、いま画面に映るゆづくんからは闘志がみなぎっているのが分かる。
「跳ぶ!」と叫ぶその表情には、鬼気迫るものを感じた。
もう。
こうなったらゆづくんは誰にも止められないだろうな。
無事に最後まで滑り切ることを祈るしかない。
祈るように手を組んで、ゆづくんの演技を見守った。
佳菜子「なんなの、こいつ……化け物?」
ゆづくんの演技終了後、佳菜子ちゃんは呆れたような、だけどうっすらと涙を滲ませた目で小さく笑いながらそう言った。
ゆづくんはほとんどのジャンプで転んで、ディダクションが5。
それでもフリーで2位に入った。
キスクラでのゆづくんの姿が脳裏に焼き付いて離れない。
あの涙は、突然の出来事に襲われた恐怖や不安、そして必死の思いで最後まで滑りきった安堵など、様々な感情が爆発したんだろうな。
「……」
言いたいこと、思ってることはたくさんあるのに、無事であって欲しいという気持ちが大きくて、それ以外の感情がうまく言葉にできない。
ゆづくん、大丈夫かな?
『またあとで』
フリーの前にゆづくんと拳を突き合わせて交わした約束。
またあとでなんてすぐに来ると思ってたのに。
「ゆづくん……またあとではいつくるの……?」
早く会って「頑張ったね」って言いたいよ。
ゆづくんの無事を願いながら、胸元に提げられた翡翠をそっと握りしめた。
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優里奈(プロフ) - エミルさん» 書いててちょっと(ほんのちょっとだけど)辛かったですー(:_;)やっぱり仲良しの二人が好きなので(^^)ここからはどんどん話が進んでいく予定です♪時間が許す時は、どんどんお話書いていきますね! (2021年9月5日 22時) (レス) id: bb1624f74d (このIDを非表示/違反報告)
エミル(プロフ) - 主人公に厳しい展開にハラハラしましたが、羽生くんと仲直りできてよかったです(*´ω`*) 更新楽しみにしていますね。 (2021年9月5日 21時) (レス) id: 68edaa3183 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:優里奈 | 作成日時:2021年9月4日 11時