氷上で煌めく太陽 (ページ10)

今日:29 hit、昨日:24 hit、合計:381,043 hit

９話【結弦side】ページ10

全日本選手権の開会式と滑走順の抽選が行われてる。

アイスダンス、ペア、続いて女子。

順番に番号を引いていく出場者の姿を見ていると、司会者に呼ばれた名前に、ぼーっとしかけていた意識が現実に引き戻された。

司会《加賀美Aさん》

加賀美、A……

あの、動画で見た子だ。

動画の中の彼女しか知らない俺は、スケート以外の場での彼女がどんな子なのか気になった。

肩より少し長い綺麗な黒髪を揺らしながら、颯爽とステージ前に歩いてくる女の子。

化粧っ気が無いせいか、動画で見たときよりも幼く感じる。

だけど凛とした空気感は変わらなくて、スッと背筋を伸ばして立つ姿はかっこよささえ感じた。

この子、本当に中２？笑
俺と同い年とかじゃないよね？

ちょっと信じられなくて、隣りにいた昌磨に小声で話しかけた。

結弦｢ね、あのこ、本当に中２？昌磨と同い年？｣

昌磨｢そうだよ。ノービスのときから一緒｣

結弦｢まじかー。すげー｣

昌磨｢ゆづくん、あの子のこと気になるの？｣

結弦｢俺のジャンプを手本にしてるって言われたら、気になるっしょ｣

昌磨｢まあ……僕も負けられない、って思ってる｣

同い年の昌磨も少なからず意識はしてるみたい。

中学２年生であの落ち着きっぷりは、この先大物になる予感しかしない。

抽選が終わったあと、思い切って加賀美さんに話しかけた。

いきなり話しかけられてびっくりしたのか、ポカーンと口が開いたまま(笑)

口閉じて、って言ったら、慌てて閉じて自己紹介してくれた。

それからちょっと二人で話したけど、喋ってみたら年相応というか……大人っぽさはそんなに感じなくて、むしろ話しやすくて好感が持てた。

コロコロ変わる表情も見てて面白い(笑)

ゆっくり話してる時間は無くてすぐにバイバイしたけど、あの子とはまた話してみたいな。

それよりもまず、４回転を跳ぶところを自分の目で実際に見てみたい。

全日本ジュニアの４回転が、まぐれじゃないってところを見せて欲しい。